罅割れた翡翠の映す影
目次過去は過去過去なのに未来


2002年02月02日(土) 自我 咲乱

人間って変なもので、他人と同じで居たいって思うかと思えば、
他人と違っていないと存在価値に疑問を感じたりもするのよね。

そういう意味で、アタシ達はひたすら他人と違ってた。
そうする事で存在価値を誰かに見出して欲しかったのかもしれない。
昔から変な子だったそうよ。
『情緒不安定なようです』って、保育園の連絡帳に書いてあったわ。

アタシ達の田舎は本当に田舎で。
1キロ四方が田んぼと川と牧場みたいな所。
家も殆ど無いから、同世代の子供が近くにいなかった。
親は自営業で子供に構うヒマなんか無くって。
必然的にあの子はいつも一人で遊んでいたわ。
幸い本は腐るほど在った所為か、乱読家だったわ。
コミックからゴシップ誌、エロ本まで、字と絵がありゃ何でも読んでた。

気が付きゃおかげで目が悪くなって、
異常なほど耳年増になって、
勉強一筋の暗いガキになってたわ。
勉強が出来ていると誉めてくれたからって。
本当はそんな真面目クンじゃなかったでしょうにね?
その頃から、アタシはあの子を見てた。
アタシが出ると怒られるから、見守ってた。

アタシが出るまでも無く、女性的な子だった。
下手に男の子を演じてるから中性的に見えていたけど。
どちらにしても真っ当な男の子には見えなかったでしょうね。
田舎の、しかも小中学生には格好のイジメ対象。
親はあの子を『強くする為に』武道を習わせた。
あの子はちっとも強くなれなかった。
でも、それでも良かったかもしれない。
良くなかったかもしれない。

あの子は耐えられなかった。
自分である事を否定して生きていくなど。
誰だって、自我を否定して生きていく事など出来はしない。
でも、あの子にとっての全てはあの子の肉親だった。
その全てに自身を否定されてまであの子は生きようとしなかった。
その日、黒に代わった。
誰も気付きゃしなかったわ。
あの子は退行して記憶と意識を閉じたけど。
アタシは覚えてる。

黒にとっては、冷静な力こそ全てだった。
肉体的にも、精神的にも。
事故で肉体的な力を失った時、黒の何かが壊れた。
少しずつ、歯車が狂いだし、機構が瓦解し出した。

缶太郎にとっての大事なものってのは、なんなんだろう。
缶太郎は、それを失った時狂わないでいられるだけの自我があるかしら?
今あの子は何かに依存しないで生きているのかしら?
それともあの子はまだ、自我の存在しない子供のままなのかしら?


Jade |MAILBBS

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