罅割れた翡翠の映す影
目次|過去は過去|過去なのに未来
| 2001年10月10日(水) |
予測していた事だから 缶太郎 |
黒、つまりミノルが、まだこの身体普通に使ってた時。 実地兼ねてバイトした店があった。 師匠も、おやっさんも奥さんも下町のいい人で。 師匠は凄く腕が良くて、人間としても尊敬してた。 黒は師匠みたくなりたくて。 レベル高い店第一希望にして、そこの試験の為に頑張ってた。 師匠の店にも、行きたかったんだろう。 第一希望の店が今回新人採るか判らないって聞いた時、 黒は担任に師匠の店へ就職希望者出すの待ってくれって頼んだ。 一月も待って、他の先生から今回新人採らない事を聞いた。 それがはっきりしたのが大分前の事だって事も。 その間に担任は自分のお気に入りの生徒を師匠の店に就職確定させてた。 黒に一言も無く。
恨みもしなかった。 唯、チャンスを逃した自分を嘲ってた。 「あいつなら、師匠の所でもっと伸びるから」
でも、心の奥では思ってた。 担任は彼を過大評価してる事。 彼が長くもたないだろう事。 そして、担任が黒の将来を犠牲にして彼に与えたその店を、 彼は馬鹿らしい程未練も無く辞めるだろう事。
半年経って、黒の予言は的中した。 黒が、何度か言っていた。 もしも、あいつが簡単にあの店を辞めたら、 …悲しい事だね。僕の分まで、頑張って欲しいから…。 彼は、何も知らないと思うから。 唯、悲しい。 運命とか予測なんてものに負けた彼の事が。 黒が。
でも、一番悲しいのは… 師匠、だよね…。 彼等に僕が出来る事、無いのかな…。
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