J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2004年01月06日(火)    本当は私、工藤さんに憧れて会社に入ったんですもの。

J (3.秘密の恋愛)

3. 想い出の夜 (18)


一呼吸置いてレイは言いました。

「あの時は私、幼かった、だから気持ちを抑えることができなかった、、、
 ほんっと、うぶ、だったんですよね、泣いちゃったり、逃げちゃったり、、、」

「ああ、それは、、、。」

(うぶとか、そういう問題じゃなくって、ひとえに僕が悪かったわけで、、、)
と私は言おうとしましたが、最後まで言えなかった。

何故かというと。
、、、レイの目が潤んでいたからです。


「でも、」、、、レイが話を続ける。
「でも?」、、、でも、何?と私。

「でも、あれでよかったんですよね、今となっては。」窓の外の夜景を遠く見ながらレイ。
「う、うん、そうだね、、、。」何がよかったのか、考えながら私。

ちょっとの間。


「でも、」、、、また、でも、とレイが話を続ける。
「でも?」、、、私。

「ううん、でも、じゃない、いいんです、これで。」今度はレイ、私の顔を見ながら。
「これで、ね。そっか。」

「いい想い出になりました。ありがとう、工藤さん。」
「ああ、そう、よかった、ね、、、」


何がいいんだ。
何がいい想い出なんだ。
ぐるぐる回る私の思考。

けれど、私は随分とまたアルコールが入ってしまっていました。
つぶさに答えを見つけることができない。

はっきりと聞いてしまえ。

酔った私はそうすることを選択しました。


「いい想い出、って、あの夜のこと、だよね、どうして?」

レイは私をまじまじと見て、そして言いました。
「工藤さんの気持ち、確かめられてうれしかったから、、、」

俺の気持ち!?

私は信じられない言葉にびっくりして相槌をうてない。

レイは続けて言う。
「本当は私、工藤さんに憧れて会社に入ったんですもの。」

何言っているんだよ〜。
レイちゃん、そんなこと、言っちゃだめじゃんか!


酔っているね、君、、、。



(3.想い出の夜、の項 終わり)



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