J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年09月18日(木)    工藤さんは分かっていなんです、

J (3.秘密の恋愛)

1. 総合職 (10)


会議室に入り向き合って腰掛ける。
いつもの光景だ。
私は右手をテーブルに置き左手でタバコを咥える。
レイは背筋をしゃんとして私の言葉を待つ。

「レイちゃん、前からたまに言っていたことなんだけどね、
 君に総合職になってもらおうっていう話さ、部長に相談したよ、正式にね、」

レイはきょとんとした顔をして「へ?」と素っ頓狂な声。

「へ、じゃない、はい、だ、まったく。」
「はい、すみません。」

一呼吸おいて。

「でね、君の意思をキチンと確認してから僕は稟議書を書くことになった。」
「はい。」
「いいね?」
「へ?」とまた素っ頓狂なレイの声。
「へ、じゃない、はい、だ、それとも何か不服でも。」
「、、、あ、はい、、、。」

しばしレイは考えている。

なんだ、レイは何を考えているのだ、こんないい話なのに。

「何だい、忌憚なく言って、僕と君だけの話として聞くから、ね、」


しばらくしてぼそっとレイは言う。
「自信、ないです、」

「んー、それは大丈夫、君はしっかり仕事ができている、他の誰よりも。
 そうみんなが認めているよ、今のままで十分、自信を持っていいよ、」

「そういうことじゃないんです、私だけ特別にそうなることが自信ないんです、
 社内には事務職の先輩社員の方がたくさんいます、有能な方ばかりです、
 そういう人たちがいるのに、私だけ、っていうのも、」

「ああ、確かに、だけど、君のように表に出て仕事ができる人はいないよ、
 そしてほとんどの人が定時に帰っちゃうじゃないか、
 君はいつも僕たちと同じ時間まで同等に仕事をこなしている、」

「工藤さんは分かっていなんです、女子社員って結構派閥があったりイジメがあったり、
 友美さんに聞いてみてください、私が言っていることがどういうことなのか、」


(友美さんにね、だけど彼女は敵を作らない人だ、
 聞いても分からない話のようだけれど、、、)


「つまり、君が特別職になるとイジメにあうと、」
「、、、言えないです、そんなこと、」
「うーん、ま、その件はちょっと考えるよ、友美さんにも聞いてみる、その他には?」


レイはまた少し考え、口を開きました。



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