J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年05月18日(日)    私は祈るような気持ちで何事もないことを願いました。

J (2.結婚)

9. 切迫流産 (12)


友美さんは芯が強い。

見掛けはおとなし目の友美さんですが、
一度こうと決めたらこうと、梃子でも動かない頑固さを持っていました。

それは結婚後私が知った友美さんの性格の一面でした。


結婚前に見えない細かな性質はお互いに必ずあるものです。
そしてそれは結婚後に徐々に現れ見えてくる。
私にとっては友美さんのこの芯の強さがそれに当たりました。



ですが、私もまた意地があります。

何故というに男が決定事項だとまで言ったことを翻すわけにもいきません。
たとえ友美さんが何と言っても、医者に行くと決めたからには医者に行く。
私は強制してでも友美さんを医者に連れて行こうと頑として言い張りました。


医者に行こう、と言う私。
大丈夫、嫌、と言う友美さん。

車の中で言い合うふたりでした。


・・

ふぅ。このままじゃ埒があかない。

そのうちに私は黙り込んで考え始めました。

友美さんもまた怒られた子どものように下を向き黙り込む。


じっとした時間が過ぎてゆく。


、、そして私は折れました。

友美さんがこうまで言い張るんだから大丈夫なんだろう。
やっぱりオレの思い過ごしかもしれないし。
見れば平気そうな素振りの友美さんだ。

こんなことをしているんだったらホテルに行って、
疲れている友美さんを休ませて上げた方がよっぽどいいに決まっている。


「わかったよ、じゃ、もう一泊だけしよう、君が大丈夫ならば。
 でね、明日は帰るからね、なに、また伊豆なんていつでもこれる、
 今は君の身体の大事を取ろうね、それで決定、で、いいだろ?」

友美さんはその言葉を聞いてホッとした表情になりました。
そして、「ごめんなさい、我が儘言って、」と頭を下げました。



私の不安は消えたわけではありませんでした、
でも、友美さんの希望も私は大切にしたかったのです、
私のことを思えばこそ無理している友美さん、その気持ちに答えたかったのです、

ですから、

私は祈るような気持ちで何事もないことを願いました。

友美さん、生まれてくる子ども、

共に無事でありますように。


・・

私は河津温泉のホテルへと車を走らせました。



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