J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年02月02日(日)    その女性には家庭があった。

J (2.結婚)

2. 引越し (5)


入社3年目の営業社員、宮川は25歳で私の部下です。

彼は入社1年目を別のセクションで勤めていましたが、
自己主張の強い奴で上司と折り合いが悪く、
厄介者扱いで私のところに回ってきた人材でした。

私はそんな彼を昔の自分を見るような思いもして可愛がり、
彼は私を慕いもし、反骨もし、私のもとで切磋琢磨し、
短期間でものになっていく、その過程にありました。

私は彼をレイが入社いた時から一人立ちをさせ、
今では相当の成果を上げるまでに育っていたのです。



宮川には恋人はいませんでした。


身長180cmを超える長身でスリムな体格、顔もまずくはない。

はたから見ると女にもてそうなタイプ。(いや実際によくもてた)


なのに宮川に決まった彼女がいないわけは、、、

いつかの夜に酒を飲み、
私が彼から、涙ながらに聞いた話では次のような理由からでした。



彼は学生時代に辛い失恋を経験した。

彼は年上の女性に恋をした。

彼は全てを捧げて愛した。


ところがその年上の女性は、
彼のことを愛しはしましたが、恋愛ではなかった。


恋愛の情の宮川。その宮川を愛しむ年上の女性。

その女性には家庭があった。

子どももいた。


だが、その女性は浮気のために宮川と交わったのではない。


彼女は、、、

一生懸命に、一本気に、恋愛の情で向かってくる若者を、

ただ愛しいと思う感情にかられ、刹那の愛に心を奪われていたのです。



いずれ、、、その情の違いは残酷に、若き宮川の熱い思いを狂わし、

彼は超えることを望めない一線を果敢に超えようとするのであるが、

結局には無残にも悲しく消えゆき、残ったものは彼の傷ついた心のみ。


彼女は現実に戻り、宮川は広い荒野に一人旅立った、、、。



それ以来彼は恋愛をしていない、そうです。


そういう奴です、宮川って。


なんだかな、かなぁ。



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