春の色は、何か全ての色彩が曖昧で。 靄が掛かったような景色が、少し憂鬱。 柔らか過ぎる日の光。 目の覚める程の鮮やかさが、どこか恋しいと感じる。
そんな、暖かな午後。
電波越しに届いた何気ない言葉に。 少しだけ救われて、また少しだけ憂鬱になる。 苛立ちは押さえ切れずにまた、爪痕を残す。
あぁそうか。 何も変わってなんて、ないんだ。 あの頃と。
少しは大人になったかと、思ってた。 でも直ぐに欺瞞だと気付かされる。 泣き喚いてしまえたら、どんなに楽だろうとほんの少し思い。 けれど直ぐに諦めた。 高慢で潔癖な自分は、それを良しとはせず。 ただ。
泣くのは、違うと思った。
めまぐるしく変わった景色の中で。 変われたと思った自分は、結局どこにも居なくて。 ただ変わってしまったあの人を、密やかに追いかけていただけで。 届かないと思いながら。 追いつけないと思いながら。 並んで歩ける、そんな日に思いを馳せて。 諦めの悪い自分を誤魔化していたに過ぎない。 演じていたに過ぎない。
けれど。 もう。 疲れてしまったよ。
眩し過ぎるあの人に、目を細めて。 届かない指先を握り締める。 掴めそうな何かが、ほんの少しだけ触れて。 それでもまた、霞んだ曖昧な景色に溶けてしまって。 生まれた幻想を振り解く程の決意すらなく、また手を伸ばし。 手を、伸ばし。 そしてまた、静かにその手を下ろした。
怖くて。 怯えているよ、今も。
触れた指先を振り解かれる。 そんな過去の亡霊に、取り憑かれる。
消えたはずの爪痕が、見えた。
そんな、暖かな午後。
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