ハロウィーン通信

[ 柳田国男とトリック・オア・トリート ]  2012年10月26日(金)

子供たちがハロウィーンのイベントを
楽しむ姿を見て思い出されたのでしょう。
昨年、地方紙の読者投稿欄に、年配の方が
幼い頃親しんだという行事について書いていました。

それは旧暦一月十五日、
いわゆる「小正月」に行われていたもので、
子供たちが集団となって地域の家々を一軒一軒訪れ、
「かいつり、かいつり」とはやす声をかけ、
餅や菓子などを貰って回った、というものでした。



ほんとうだ。語源はわかりませんが、
まさしく「トリック・オア・トリート」ですね。
いまはすたれてしまったのを惜しんでおられました。

柳田国男の『雪国の春』の中で
思いがけず、その行事に行き当たりました。
男鹿半島の風光を讃えた『おがさべり』という紀行文の中で、
当時は衰えかけていた「ナマハギ」の
風習について述べている部分です。

奥州では恐ろしい姿と恐ろしい声で訪れる正月神は、
仙台から南へ行くと、目出たい事を述べて
酒や餅を貰うようになります。

更に下ると多くの地域では小児の仕事になって、
関東のタビタビ(給え給え)、
中国のホトホトまたはコトコト(戸をたたく音)、
瀬戸内海から「カユヅリ」

──これだ。

 もとは交易の申込みであったろうが、
 もうこの方面では単なる物もらいに近く、
 したがって小児ばかりがこれに参与するゆえに
 小学校ではやかましくこれを制止する。
     『北国の春』 著/柳田国男 角川ソフィア文庫


昭和二年の記述です。
投稿者の方が幼い頃楽しんだ行事は
伝統として継承されなかったというより、
教育上よろしくないとされたのかもしれません。

それでも、雪国では「悪い子はいねがー」と
荒ぶる異相の神が地域を訪なう有名な行事が残るように、
南の各地にもところどころ、正月神に仮装した子供たちが
菓子を振る舞われる祭事が残る地域もあるようです。
もてなしが十分でないときは仕返しをするという土地も。

もとは土地の神だったものが化物の姿になり果てたのは
後に広まった仏教がその地でも力を持つようになったからで、
キリスト教が広まって地域神が魔物扱いになるのと似ています。



ハロウィーンは古代の新年の前の晩、
ナマハギ・カイツリは旧い暦の新年の行事ですが、
ヒトが異形の姿を模して地域を訪れ、
各戸でもてなされ慰撫されるという形はほぼ同じ。

──お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ。

爺様。
懐かしい風習は、失われたのではないのかもしれない。
現代の子供たちが楽しめるよう、びっくりするほどハイカラに
姿を変えて戻って来たのかもしれません。(ナルシア)


--------------------------------------------
※『ハロウィーン通信』についての検索はこちらから。


My追加
ハロウィーン通信 Top前回次回
by お天気猫や
ハロウィーン通信*バナー
[ ハロウィーン通信 * ハロウィーン情報全般 ]
ご感想をどうぞ。