hazuki's diary

2004年10月22日(金) コトコト・・・(SSS)


湯気の向こうに・・・おまえがいて
温かな鍋の中身を俺に取り分けてくれる


「珪くんの好きなものはこれかな♪」

差し出された器を受け取るとき・・・
触れた指先が・・・熱くなる


「サンキュ・・・」

目の前で・・・コトコトと音がする土鍋
一人きりの家で・・・使うことなんてなかった
でも・・・こうして二人で向き合ってる


「味の保証はしないけど、食べてみて」

「ん、いただきます」

いつも使っている箸なのに・・・
おまえが作ってくれた料理を食おうとしたら
箸が喜んでるみたいで・・・変な気分がした
俺が嬉しいと・・・箸も嬉しいんだろうか

口に運んだのは・・・俺の大好物
軟らかく煮込まれて・・・・ん、うまい


「どぉ?美味しいといいんだけど」

「うまいよ・・・本当に」

「よかったぁ」

にっこり笑顔になったおまえ
その顔を見るだけでも・・・幸せだけど

何より、この大好物がうまい、うまい、うまい
俺は・・・好物を取ってもらうたびに嬉しくて
すっかり無口になって食べ続けてた


「珪くん、本当に好きなんだね、それ」

「あ・・・」

気がつくと、土鍋の中には俺の好物がもう残りひとつ


「おまえも、食べろ」

そう言って・・・俺は大好物をおまえの器に乗せた
おまえは「うん♪」そう言って、嬉しそうにそれを食う


「美味しい」
「ん、うまいだろ」

何も特別な事をするじゃない
ただ・・・ゆっくり流れる時間が温かい
鍋が・・・うまい季節になったな・・・
また、作ってくれ
一緒に食おうな・・・二人で




END









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LM 葉月 珪 [MAIL] [HOMEPAGE]