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【新生銀行上場。外資はハゲタカか?】 2004年02月19日(木)

 事務処理にかまけて日記の更新が滞っていること、多方面からご叱責を頂いております。しばらくの間、空いている過去の日記の日付を利用して、時事問題等で思うことを書いていきたいと思います。皆さまのご意見・ご感想をお待ちしております!

 今日、新生銀行が再上場しました。予想を超える高値が話題となっています。リップルウッド(正確にはそれを中心とする外資グループ)は、1200億円の投資で1兆円近くの利益を得ることになるといいます。リップルウッドが新生銀行を国から買収した98年、当時は「外資=ハゲタカ」という意見があふれていました。そして、「瑕疵担保特約」や新生銀行の「貸しはがし」が批判を浴びていました。
 新生銀行をめぐる話題は、金融をはじめとする日本経済の多くの重要論点を含んでいるので、しっかり整理すれば長文になってしまうのですが、とりあえず私の考えをかいつまんで書いてみます

 まず、「ハゲタカ」ファンドについて。批判する論者は、リップルウッドをはじめとする企業再生ファンドを「日本から大金を奪う無法者」それこそ黒船のように敵視していました。しかし、何故、こういう事態になったのか経緯を含め冷静に考える必要があるのです。80年代後半以降の「護送船団方式」を典型とする大蔵省の銀行行政の失敗、そしてそれに甘え、土地担保融資に邁進し、他の分野での金融技術の開発を怠った金融機関。その末路の一端が日本長期信用銀行の破綻だったのです。投入された公的資金8兆円のうち、3.7兆円は預金者(=日本国民・企業)の保護、3.8兆円は不良債権処理(=借金を払えなくなった日本企業の肩代わり)に使われているのであって、それはあくまで「日本の国民のため、経済のため」だったはずです。
 旧長銀は国から10億円で売り出されましたが、その金額でさえ、買える日本企業は当時無かったし、そもそも、新しい銀行として蘇らせるノウハウを持っている日本企業は無かったのです。まず何より、そのことを問題視すべきなのです。
 大規模な銀行が21世紀を生き抜くには、極めて多くの先進的なノウハウが必要です。日本の大手銀行は、どこも未だに試行錯誤を繰り返している状況です。金融において、そのノウハウ(ビジネスモデル)を持っているのは、アメリカとヨーロッパのいくつかの企業だけ、という状態は今でも続いているのです。そのノウハウこそが、彼らの収益の源泉なのであり、今回の新生銀行上場による利益は、銀行を再生させた(=助けてあげた)ことに対する報酬なのです。
 一歩引いて、さらに広い視野で考えてみて下さい。日産のカルロス・ゴーンは日本の「名経営者」として賛美されていますが、日産は、外資(フランスのルノー)の傘下となり、カルロス・ゴーンが送り込まれ、成功したのです。日産の収益は当然ルノーにも流れています。日産は半ば外資企業であり、そしてマツダも同じ(GMのグループ企業)です。カルロス・ゴーンでさえ、当初は「外資のヤカラが、冷血にリストラばかり」という批判があったことを思い出して下さい。その一方、トヨタやホンダの世界での躍進は、アメリカ市場において、アメリカ人が最も誇りとする3大メーカーの市場を侵食したことによるところが大きいのです。
 外資か日本企業か。ボーダーレスな世界市場において、そのような区別は意味をなさない場合も多くなってきました。特に大企業において。私ももちろん、ものづくりでニッチ分野の世界シェアNo1の「日本の」中小企業にはいつも感動し、拍手喝さいしていますが、それと、大規模な株式会社は区別して考えねばならないでしょう。
 更に、業種によっても区別しなければなりません。先述したように大規模な金融の分野では、日本は、世界市場で活躍するアメリカやヨーロッパの金融機関にはまったく歯が立ちません。そういう状態はこれから少なくとも15年は続くと思います。その一方で、自動車を筆頭とする製造業(ものづくり)においては、多くの日本企業が世界の第一線で活躍しているのです。

 ここまでで随分長くなってしまいましたので、もう一点だけ。
 新生銀行が数年前に「貸しはがし」批判を受けました。それは、なかなか借金を返済してくれない大企業に「早く返してほしい。もう縁を切りたい」と催促したのです。いくら大企業であっても、借金の返済を延ばし伸ばしにしたり、時には踏み倒したり(=銀行の債権放棄)、ということがいくらでも許されていいのでしょうか?
 銀行への公的資金投入も、いわば、大企業が踏み倒した借金を、税金で、つまり国民が肩代わりしているということです。例えて言うなら、その大企業の従業員の給料を、国が間接的に払ってあげているということなのです。「too big to fail」(会社の規模が大きすぎて倒産させられない)という言葉がありますが、経営が行き詰っている(=毎年赤字が続き、多額の借金も増える一方の)大企業(例えばダイエー)が、借金を踏み倒す(=銀行の債権放棄)のを大目に見て、その銀行に公的資金(税金)を投入するのか、それとも、その企業に将来性(=経営改善により黒字になり、いずれ借金も返せる)はないと判断して、倒産するのもやむをえない(税金を使わない)と判断するのか、冷静かつ長期的な視野が求められています。
 新生銀行の判断が、政府(金融庁)や他の大手銀行の判断と食い違った部分があるということですが、私は、他の銀行の方が正しい判断能力(先述の「ノウハウ」の一つです)を持っていたとは思いません。それは、当時から数年後まで他の大手銀行の不良債権は少しも減らなかったことに象徴されていると思います。
 


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