| 2017年07月26日(水) |
人間とは何か(メルマガ引用) |
言語の起源について私がなんとなく抱いていたイメージといえ ば、「最初に単語ができて、やがてそれらを統べる文法ができ ていった」というものでした。しかし、理化学研究所の岡ノ谷 一夫さんはそうは考えなません。岡ノ谷さんが考える、ヒトの 言葉が生まれた流れはこうです。
最初にいくつものフレーズが組み合わされた歌があった。 ↓ それが短い部分に切り分けられ、意味を持つ単語が生まれた。
どういうことでしょうか? まだ言語を持たなかった頃、私たちはおそらく歌で気持ちを伝 えあっていたと岡ノ谷さんは考えます。一方に、「俺はマンモ スが好きだー」という気持ちを表現する歌があったとします。 もう一方には、「俺はあの子が好きだー」という歌があります。 この時、両方の歌に共通する部分が、「俺は〜が好きだー」と いう意味の言葉になっていったのではないか、というのです。
このワクワクする考え方(=『歌起源説』、正確には「歌と文 脈の相互分節化仮説」という名前がついています)のヒントに なっているのはなんとジュウシマツ。ヒトとジュウシマツの間 には、この説の根拠となりうる類似性が複数指摘でき、また、 その脳にも科学的な共通性が見出されているといいます。もち ろん、言語の起源に関しては確かな結論などでませんし(永遠 の謎かもしれません)、まだまだわからないことだらけなので すが、描写される岡ノ谷先生の様子や言葉から、情熱をもって 自分のテーマを学問的に追求する面白みは存分に伝わります。 何より(著者も書いていることですが)、言語の起源を探求する ことそのものが、「言語がいかに人間にとってかけがえのない ものであるか」を私たちに伝えてくれるのです。
「私たちは、言語をかけがえのないものとして扱える存在であ る」。それは、「人間とは何か」という問いに対する一つの洞 察となるのではないでしょうか。 そんな岡ノ谷さんの人間の定義は、「ヒトとは愛を歌う動物で ある」。各章に登場する魅力的な研究者が、それぞれの立場か らどのように人間を定義しているか読めるのも、本書の魅力の 一つです。
余計なことかもしれませんが、本書に出てくる「キーワード」 に、各大学の入試問題で使われる英文の中でしばしば出会うと いうことも、一応触れておきたいと思います。各研究の「最前 線」はいろいろなところで共有されているのですね。
「人間とは何か」という根源的な問いについて何らかの視点で 深く掘り下げて考えるきっかけを得ることで、人生は豊かにな ると思います。 中学2年生には少し難しいところもあるかもしれませんが、各 章は独立しているので、気になる一章だけでも読んでみてはど うだろうかと思い、紹介しました。
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