+女 MEIKI 息+
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2006年08月23日(水) 日付は微妙


 そして教育上良くないので、ペット宅の通販雑誌は後日没収しました。
 「知りたいことがあったら、なんでもオネエサンが教えてあ・げ・る♪」
 嘘です。
 どうあっても敵わないほどソノ点にかけてはペットのほうが博識です。どこでどう学習したかはさておいて、たぶん天性の素質がソッチ方向に長けてたということにしておきます。




 「お互いのカラダをオモチャに戻さないと、愛されているのかと勘違いしちゃいそうだよ」ってな感じのことを以前書いたような気がします。気がするだけで内容がソレだったかどうかは不明です。




 こんなにも傍に居る存在でありながらそれ以上を望んだつもりではなかったのに、ふとした相手の素振りが半歩退いたように感じると、自分が踏み込み過ぎたのではないかと、そんなつもりは無かったのだと伝えたところで言い訳に過ぎないだろうし、その前に言葉すら出てこない。気付くとサラサラと周りがこぼれ落ちてわたしの位置が円錐の頂点なり、何か言葉を発した途端に零れ落ち往く砂と一緒に流れ落ちてしまいそうで立っているのが精一杯な気分になった。
 真芯に重心をおいたヤジロベイなら上手に揺れながらも立っていられるのだろう。

 この説明の付かない気分から逃れたくて、どうして投げやりな気分になるのかも分からないまま、秒針が時を刻む毎に小さな棘に刺されるような苛立ちに変わってくことだけに追い立てられて、あても無いのに外に飛び出した。
 やけに明るい月は行く道だけでなく容赦なくわたしの影を浮き立たせ独りであることを確認させる。隣に並ぶ影が何であってもそれは変わりなく、厭味なスポットライトを浴びながら街中を歩いた。
 光の交差するネオン街を抜け、次に暗い脇道に入る頃に声をかけてきた男と並んで歩いていた。
 何を話したか覚えていない。
 そもそも話しをしたのかさえ覚えてはいない。
 カーテンの隙間から射し込む夏の怠惰な朝日に嘲笑われ、結局寝付くことが出来ないまま知らない誰かのベッドで迎えた翌日。
 気楽な顔をして寝息を立てている見知らぬ人を起さないようにそっと身支度をして、テーブルに置かれた鍵で玄関のドアを閉め新聞の投函口から鍵を投げ入れ覚えのない部屋を出た。
 アパートの階段をサンダルのヒールが音を立てないように気をつけて降りた先は細い路地だった。
 左右を見てもどっちに歩き出していいのかすら分からない。
 とりあえずは眩しさに向かって歩き出す気にはなれず、陽に背を向けて大きな通りを探した。夏の陽射しはこんな早朝でさえ、爽やかさなんてこれっぽっちもない。早々に熱せられたアスファルトが毒のコールタールとなって足に絡まってくるような気がする。
 しらけた顔をした人々が鮨詰になって行過ぎる反対の電車を乗り継いだ。人もまばらな空いた車内であるのに満員のときのような強冷房に晒されて、飲み下せない感情を残し体の芯まで冷え切った。電車を降り既に熱くなった見慣れた道を歩いている間も、かく汗すら冷えているように感じながら、なんとか家に着いた。
 ドアを開け部屋に入ると、窓の締め切られ主の不在だった空間は湿気を含んで重く蒸し暑い。冷房をかけ、その場で服を脱いで浴室に入る。
 熱めのシャワーを浴びて、多めのボディソープで体の隅々までゴシゴシと洗った。
 バスタオルを巻いて濡れた髪のままベッドに体を投げ出すと、途端に眠りについた。
 捨て鉢気分は目覚めてもなお続いていた。

 好きという感情をおもてに出すのは難しい。
 押し付けてやしないか、受け入れてもらえるソレは相手のその時の気分にもよるかもしれない。
 嫌いというほうがよっぽど楽である。嫌いなモノに対して、何の遠慮も無い。誤解を受けたところで痛みはない。
 相手を思いやるなんてことは、わたしには到底無理なのだろう。わたしはわたしが可愛くて仕方ない行動しかきっととれないから。そしてそれは、時にオモチャにしないと感情の行方が自分で確認できないでいる。




 「最果て」っていうのは、どのアタリを言うのでしょう。


香月七虹 |HomePage