きまぐれがき
目次pastwill


2005年06月14日(火) 少女だった頃の新宿駅

前回の上京では渋谷の変貌ぶりに驚いたのなんの。
先週は新宿駅の雑踏で立ち止まっては、周辺を見回して考えてから
じゃないと、どちらの方向へ向かって歩けばよいのかオロオロする
ばかりだった。
しかもラッシュ時。呼吸が苦しくなって倒れそう。大阪のラッシュアワー
なんて可愛いもんだ。まだ隙間があるもの。
見ず知らずの人の皮膚と密着するのは恐ろしい。苦手だ〜
もう私は首都では生きていけない。


あんなに愛着のある新宿駅だったのに。
中学時代、お琴を習いに行っていたのが四谷三丁目だった。
西荻から中央線に乗り、新宿で丸の内線に乗り換えて通っていたの
だが、冬になると帰りの丸の内線の車内でたびたび気分が悪くなって、
新宿駅が近づく頃には意識が遠のき座席に座っている人の膝上や床
に引っくり返っていた。

ホームを駅員さんにおぶってもらって運ばれていくのはわかっていた
ので、意識を失うのはほんの瞬間だったのだろう、
それでも新宿駅の駅員室の簡易ベッドに寝かされた。
初めの頃は駅員さんたちも心配してくれたようだったが、これが度重な
ると「また○○ちゃんなの。気分が良くなったらタクシーで帰りなさい」
とか言ってタクシーに乗せてくれたりしたので、善福寺池の家までタク
シーか。。 楽チンだぐらいの気分で、もうこの頃にはいつもすっきり元
の状態に戻っていたので、親たちは心配したけれど医者にも行かなか
った。

翌日私は元気に学校。母は菓子折りを持って駅員さんへのお礼と、こ
んなことをいったい何回繰り返したのだ?

ある時、母に「お稽古場の暖房はどうされてるの?」と訊かれたので
「和風趣味の先生だから。もちろん火鉢に炭火」と答えると、
「それ!それ!炭火の一酸化炭素中毒で引っくり返るのよ!」
エミール・ゾラの死因と同じらしい。。炭火でだったのかどうかは知ら
ないけれど。
へぇ〜〜

ドレフュス事件で、イギリスに亡命せざるを得なくなってからも、時の
大統領に弾劾しつづけて、ああ失っていなかった反骨精神。。のゾラか。
この辺りを描いた映画「ゾラの生涯」を今、突然見てみたくなった。
確か戦前の作品。レンタル店に置いてないだろうなぁ。

私の中学時代、そりゃぁ遠い昔だ。
あの頃でも火鉢に炭火だなんて、どこの家でも見かけなかった。。
和風拘りの先生のお稽古場で火鉢を見て「えっ!?今どき何?」とび
っくりしたもんだ。
その火鉢に顔を突っ込むようにして灰をかき混ぜながら、自分の番が
くるまでお稽古仲間とヒソヒソ話をしていた。
それが地下鉄の車内で引っくり返った原因なの。。。?

だって私だけ。ほかのお仲間はピンピン。なによりも一番長くお部屋で
過す先生がなんともないではないか。。と腑に落ちない気もしたが、親
たちが原因はそれだ!それだ!と言い切るので、
「じゃあそれでいいから、もう行かないでいいね」とあっさりお琴はやめ
た。

その後、私は晴々と駅員さんたちに「もう引っくり返ってお世話になる
ことはないですから」と、お小遣いで買ったお人形か何かを持って告げ
にいったのだったと思う。




その後邪魔だ邪魔だと冷淡に扱われつづけたお琴は、結婚する時にも
実家に置きっぱなしでは邪魔だからと持たされて、今は床の間の主。
触ってみたら埃まみれでプファ〜。

ずっとお稽古を続けてこられて、この間も発表会に出られた山ちゃんを
つくづく尊敬してしまう。




ギブリ |HomePage