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2005年12月28日(水) 仰天2題(下 -3- )仙人現る !



 Vien村を後にしてしばし、車が一台やっと通れるくらいの、深い谷にかかる石橋を2つか3つ渡り、大きく山の腹を巻いて、山と山の馬の背(コル)に当たる所を越えたと思ったら、正面のそこがオペデット(Oppedette)の入り口だった。

 村の入り口の前には、車が2、3台駐車出来るスペースがある。右の道下は深い谷。入り口の向かいには、ぽつんと一軒小さな村役場(??)か案内所がある。人気がない。
車を止めて村に入るも、まったく人の気配がない。ここも猫の天国で我が物顔でたむろしている。Vien村より、多いかもしれない。死んだような村の中の石の建物の間を通っている、幅2〜3mの石畳をさらに行くと、建物に突き当たって左に直角に折れ、数歩行ってまた建物に付き当たって右に折れてこの道は、ずっと先の断崖絶壁の谷を見下ろす村はずれまで続いている。

歩けば時間にして、5、6分で端まで行けてしまうくらいの村だ。
観光客が対象とするような見るべき物はない。
ここにも、小さいがCafeが一軒だけあった。店の入り口横に粗末な椅子とテーブルが一組、そこに荷物を置いて店の中を覗き込んだ。薄暗く狭い石壁の店奥のテーブルにおばあさんが一人何かしている。
総じてフランス人・イギリス人は、どんなに暗くても昼間っから電灯をつけることはしない。
「コーヒー飲めるか?」
「あいよ!」
この村に来た日本人としては多分、ほとんど初めてではないかと思うのだが、こっちを見て取り立てて驚きもしなかった。

 猫は寄ってくるが人がいない。店の前の石組みの古い館の前には、花が飾ってあるのだけれど人の気配はない。
しばらくぼんやりしている間も、黙っていると静けさのあまり、耳がキーンと鳴る音が聞こえる。時が止まっている。花が微風に揺れる以外何も動かない。
 その時、突然ハンチングのがっちりしたお兄さんが前を通った。何だ、いるじゃないか。こっちを見てにっこり。こっちも 応えた。
お兄さんは、郵便配達夫だった。二三の家を回り配達した後、 店に来て、おばあさんと奥で世間話をしている。

 この村は遠くから眺めて美しい村で、まっただ中でいても仕方ないので、眺めの良き場所を求めて、村を出て、の色褪せた一枚の写真をとったと思われる場所を探した。村から、今来た反対の道を歩いて7、8分行くと、道からは、谷を挟んで村の全景が見える。そこから少し山に分け入ったあたりが近いと思われたので、山側に車を置いた。車のすぐ横は、背の高さくらい山肌が露出しており、その上は低木と雑草が生い茂り、より眺めが良さそうだった。

少しよじ登って写真を撮ろうと思い、準備を始めたその時である。車を止めたすぐ上の薮が、がさがさ動き、何か頭のようなものが出た。
びっくりした。羊かと思ったがそうではなかった。人だった。
あたりには止まっている車はない。頭のようなものが出たちょっと後ろには、羊の転落防止のための鉄条網が張ってあるのが見え、そこは、おおよそ人のいる場所ではないし道もついていないところだ。

よく日焼けした茶色の頭がこっちを見た。眼鏡をかけている。東洋人である。どこにでもいる支那人かとも思ったが、とっさに「こんにちは」と日本語で言ってみたら、「こんにちは」と答えた。向こうもびっくりしている。

「何でこんな所に!?」 そっくりこっちが聞きたい。










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