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2003年08月27日(水) 怪奇譚。



 一昨日用があって久しぶりに大阪に出かけた。長堀の地下街の広場に、丸善が本の安売りをしていた。掘り出し物があった。
 「鳶魚江戸文庫」三田村鳶魚(えんぎょ)著、朝倉治彦編
欲しかったのだが、全−三十六巻別巻二三もあり、四・五年前から躊躇していた。
これは中公文庫で一冊 六百円から−九百円の幅があって、平均七百五十円として、全巻そろえると三万円近くなる。旅行や食い物などには簡単にそのくらいの金額は出ていくが、昔から辞書や本に使うとなるとなかなか決心が付かず、買いそびれる事がよくあった。
全巻はさすがにそろっていず、その中で、興味のある物を買った。値段は半額になっていた。

 近くにあるホテル日航の喫茶室兼食堂に入り、鳶魚の書く、江戸時代の風俗・武士の事など興味深く読んでいた。鳶魚は、淡譚の生まれた年に亡くなった。生まれは明治三年で江戸時代はすぐ前であった。日清戦争に従軍している。後、新聞記者になった。
 で、鳶魚の話がこれから続くと思うと続かない。まだ読んでません。広い御堂筋の見下ろせる席に案内されて、オリーブとチリの赤ワイン(これは美味かった)を頼んでちびちびやりながら本をぱらぱらめくっていた。夕食時真っ最中の事もあって、ほぼ満席であった。
左隣の客は、中年の、きちっと髪をなでつけ、真っ白いシャツを着、ネクタイをし、がっしりした眼鏡をかけた思慮深そうな紳士、その隣には娘くらいの年齢の女の子、向かいの二人はハワイとかグァムに行けばそこら中にいるような体格の女の人二人。

 この人達の会話をそれとなく聞いていると、やがて尋常じゃない話をしている事に気がついた。 

男あ「…それでどうなの X県の支部長」
女い「それがね、経絡についても説明するのだけどそう単純じゃないのよねぇ」??

経絡…? 針灸のツボの道の事だろうから、これはそういう関係の人達かも知れないと思って聞いていた。しばらくその話が続き、もう一人の女が声を潜めてこういった。

女う「ところで、あの支部長の年収はどのくらい?」
男あ「実は…、あんまりもらってません、あんまりよくないですよ、あの人は。」
女い「どのくらいなんですか?」
男あ「そうですね、六千万くらいでしょうか」

 え!?聞いていて一瞬耳を疑った。これは「円」だろうか?まさか「元」とか「バーツ」?
 だが聞いていて、紛れもなくこれは今の日本の話であった。
 さらに、驚くべき事を男は言った。
男あ「普通は年収四・五億はあるんですが…」
一体この会話はなんなのだ。時間制の食べ放題のテーブルについて入れ替わり立ち替わり、皿に、半日ほど前に作り置いたと思われる、美味くもない(淡譚は絶対に食べない)、料理を運んできては、食べながら話す事なのだろうか?
思わず顔を見た。
 










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