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2002年03月31日(日) 桜とお花見



 小さい頃、春が来ると、よく家族親戚で家から田んぼの畦を抜けて、山懐の開けた所にある陸軍墓地に、歩いて遊山に行った。陸軍墓地が聴き取れなくて、「りくうんぽっち」と、いい歳になるまで意味も考えずにそう覚えていた。
墓地といっても、墓や卒塔婆があるわけではなく、鉄扉で閉じられた奥、長い階段が上に続くその最上部に、日本の、故郷の、ために戦って亡くなられた人々への慰霊塔があるのみで、それも普段扉は堅く閉じられて入れなかった。その下ちょっとした広場に、幾本か桜が植わった中の、ひときわ大きな樹の下を選びお花見をする。
 今思うと、春慶塗りのような、三段引き出しがついたお弁当箱を下げて行った。取っ手は、昔のタンスの引き手のようなものが付いていた、昔の公家の菓子箱のようなものだ。
中には、赤飯の盛相飯、ゆで卵、竹の子、金時人参、昆布巻き、林檎のうさぎなどが入っていた。それを大きな桜の樹の下で茣蓙を敷き、食べる。

 四國の田舎のことで、普段日には人は殆どいない。だからどんちゃん騒ぎはなく、静かなお花見。風が時折強く吹くと、シャンペンの泡のように、花びらが舞い散る。陽は桜の木にほの暖かいぬくもりを伝えて、それが青葉が萌え出る前の木の周りに、桜餅のような香りを漂わせていた。
 これからもみんなそろった花見が、毎年ずーっと続くと思っていた、幼い頃の夢のような思い出。

 お花見が一番最初に出来る、沖縄の寒緋桜(カンヒザクラ)は、普通の桜と違って、花の色が濃く、下向きに咲くので、その下の花見はさぞ、華やかだろう。一番最後の花見は北海道のチシマザクラで、涼冷な、桜の下でのお花見もまたおつなものだろう。

 子供の頃、緑色の花びらを持つ花を作り出したらノーベル賞??と言うことを博物館に勤めていた父の同僚から聞いて、それはこの世に今存在していないんだと子供心に思ったことがある。が、最近その緑色した桜があることを、知った。御衣黄(ギョイコウ)という桜の花は、淡い緑色をしていて、その木は、多摩森林科学園にあるらしい。東京にはよく行くけれど縁が無くてまだ見ていない。










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