■TRASH■

2002年09月05日(木) 本を買う

まるで奈落の底に続く穴だった。

朝スペースを作っていたのを知っていたので、それから長く見積もっても最大で12時間しかない筈。

確かに12時間もあれば、効率良くすればRPGの1本もクリア出来るだけの余裕はあるだろう。

でも。
これだけ活字離れが進んだこの時代、在庫が並びきらない分がどれだけあったか知らないけれど、
一山20冊以上は詰まれているであろう平積みのスペースに、穴が開くには決して充分な時間ではないと思う。

なんといっても、そもそもがまだ早売り期間で、今日は正式な発売日ではない。
ネットでそろそろ売り始めているという情報はあるにはあるけれど、
場所によって差異があるために、毎日実際に覗かないといけない訳。

漫画ではない。
秋葉原にお兄ちゃんが並んで買うようなゲームの原作付きでもない。
改行がたっぶりの、文字が大きくて、読み返す必要がないくらい言外の意味がないために、
20分もあれば読み終えられるようなお手軽なものでもない。

それなのに、秋山瑞人先生の「イリヤの空、UFOの夏 その3」の場所だけは、
月の裏側まで届くかのごとくかの穴が開いていたのでした。

がががーーん。

乗り換えに使っている品川の駅の中の本屋は、結構小説の新刊の早売りをしているので、
発売日近くなると、いそいそと行きと帰りがけに寄って見るんですけど。

朝準備してるお姉さんに頼み込んで、売ってもらえば良かったかなー。
でもまだその段階ではスペースを開けているだけで、それに所詮まだ発売日前。

地元の本屋も早売りするんですが、いかんせん入荷数が少ないのですよ。
2巻が出た時は、立ち読みしていた人のを奪って買ったという恥ずかしい思い出が。

それにこれの連載のためだけに、掲載されている雑誌であるところの電撃HPまで買っているので、
内容は全て知っているんですけど、あとがき楽しみだし、書き下ろしあるかもしれないしで、
もう待ちきれないのでした。

地元の書店で買えて、ほくほく帰宅。
わーーーい。

いやほんと、この人の文章はものすごい好きです。
元プログラマーらしいんですけど、それが納得出来るような文章。

そこここのイベントのタイミングとか、処理のフロー自体が良いのに、
さらにそのイベントの中の関数を、どうやったら美しく書けるかというのが、
大変にこだわって書かれてるのがすごいなぁと。

それに、情景描写のタイミングがすごい好きです。
そこにある風景が違和感なく書かれていて、なんというか、
本を読んでいるのに、テレビを見ている感じというのでしょうか。
いや、匂いを思い起こさせる分、テレビを超えている気がする。

蝉の音が聞こえて、日差しがまぶしくて、
塩素の匂いや、じっとりとした底にたまるような空気。

まるで自分が自然にその対象物に向けて視線を移動させているような錯覚を受ける
背景描写を書く人って、そういない気がするなぁ。

そして疾走する物語。
疾走させられているのは読み手か。

惜しむらくは隔月発売の雑誌に掲載されているので、
続きが出るのがまだまだ先ということでしょう。
でもクオリティとかを考えるとそれ以上は難しいのかなぁ。

ああ、愛故に筆が止まらなかったわ。
だってだって、本当に好きなんだもん。

本当に続きが待ち遠しいです。


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