シジミは 本当は見つかりたくなかったのかも知れない。
北上川のほとりで静かに息を引き取りたかった。
飼い主に無理矢理 獣医に連れて行かれ 注射やいやな検査など受けたくなかった。
「もう助かりません」と獣医に言われるまでもなく そんなこと シジミ自身がよく知っていた。
家族に必要以上になで回されたり 水を強要されたり、そんなことうっとおしかった。
誇り高く 気位の高い猫だったから、 自分で死ぬ、と決めたら あとはほっておいて欲しかったのだ。
家の中に入れられてしまったら、もうふらつく足では 北上川のほとりにも行くことはできない。
シジミは仕方なく 家の中で息を引き取った。
葬儀や火葬は 残されたもののためにある。 人間たちのためにシジミは弔う身体を残してくれた。
色とりどりの庭の水仙、ユキヤナギ、ワスレナグサ、ムスカリを 手向けられ、人間に満足感を与え、そして骨となった。
遺骨を抱えて車で帰宅したとき、 車を出迎えてくれるのが常だった白黒猫の姿はもう見ることはない、 と 家族みんなが思った。
3年前の5月末のシジミ
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