雪が降って 道路は大渋滞だった。
次女は 3年間ずっと同じ担任の先生で、言葉では言い尽くせないほど お世話になった。
小柄な美人の 声の澄んだS先生 薄い桃色の着物に紺のはかま姿で 教壇で 最後のお話をなさった。
「入学した時から 私は みんなに 口をすっぱくして言い続けましたね。 遅刻はするな、提出物は期限内に、等々 でも これから社会に大学に行くみんな いいですか 人に信頼される人間になりなさいね。 人に信頼される、 それが 一番大事なことです。 だから・・元気で・・・頑張って。」最後は 涙で声がふるえていた。
「やだー先生もらい泣きしちゃうよーー。」と女子ばかりのクラスの みんなが 騒いだ。 「いいんです、めったにあることじゃないんだから もらい泣きしたって いいんだよ。」先生は泣き笑いになった。 「さあ 係の人」 先生にうながされて 係のスガちゃんは 「起立!」と号令をかけた。
みんなが立ち上がり 礼をしかけた その時 副担任の先生がきたので 「あっごめんごめん 副担からのお話があった。」 がく〜〜っと みんなは大笑いした。
副担任は背が高く 色白で 明るい笑顔の先生、 同じく はかま姿でニコニコお話をした。 『一人一人 本当に言いたいことはいっぱいあるけど きりがないので 『おめでとうございます』この言葉だけにします。」
S先生が また教壇に立ち 言った。
「そして今度こそ最後だね さあ 係の人」
号令は かからなかった。
係のスガちゃんは 顔を真っ赤にして 目にタオルを押し当て 泣いていた。
自分の号令で みんな別れなければならないのだ。 楽しく陽気な1組の3年間が 終わる時が来たのだ。
「スガ!」「スガ〜〜〜」みんながスガちゃんを励ました。 スガちゃんは 声をふりしぼって 泣きながら『起立!!」と言った。
「礼!!!!。」
「ありがとうございました!!」とみんな声をそろえて言った。
積雪20センチ、校舎も校庭も真っ白だった。
昇降口では K高名物の合唱部が 美しい校歌を ア・カペラで歌い 見送る後輩たちの群れにも デザイン室から作品を運び出す生徒にも 高校生活の最後のざわめきの上に 雪と校歌が いつまでも 降り続けていた。
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