ばいばい。
わたしの友人が、4月7日に亡くなりました。 サイトを少しの間だけお休みしてたのは、それが原因です。 書こうか書くまいか悩んだのだけど、彼女のことを書かないと、わたしが 前に進めないような気がしたのです。わたしなりにケリをつけたかったんだ。 というわけで、彼女のことをわたしなりに書きました。 長いです。でも私の大切な友人のことです。もしよければお付き合いください。
そして今日は初七日。 できれば彼女のために、少しの間、そっと手を合わせてくれると嬉しいです。
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彼女と出逢ったのは2001年。 『オー・ド・ヴィ』の撮影現場でだった。 返事がよくて、しゃきしゃき働く彼女とは、その後も「知り合い」という形で 付き合い続ける。年賀状をやりとりしたり(コリンファースの年賀状が懐かしい) 彼女のサイトに遊びに行ったり。
そんな彼女との距離がぐんと縮まったのは、去年の映画祭。 わたしたちのお手伝いに快く応じてくれたのが始まりだった。 シャイで控えめで、だけど責任感があって、こっちがウダウダしてるときには ポンと一言、心が軽くなる言葉をくれるような、そんな人だった。
お互い助け合って映画祭を終えて、初めて携帯の番号とアドレスを交換した。 彼女が某コミュニティサイトでニッキを書き始めたのもこの頃。
どんどん距離が縮まっていく。 彼女は映画好きで、本好き。 本を貸し合って、感想を言い合い、図書館の本を又貸し(ごめんなさい)する ために、職場に来てくれたこともあった。「読書のおともに^^」と無印良品の キャンディとクッキーを持ってきてくれて。
あまりの嬉しさに、「よし、飲みに行こう!」とその場で盛り上がり、 わたしの職場の事務所で、飲みに行く日にちを決めて。
それで二人で初めて飲みに行ったのだ。 韓国料理屋さんで、ビール飲んで、マッコリ飲んで。 二人ともいい具合に酔っ払って、よし、二次会だ!と意気込み、彼女が前から 行きたいと言っていた某酒店にタクシーで乗り付けた。
熱い話をした。 初めて飲みに行く人と、こんな話をしていいの?…そう思えるほど、赤裸々な 話をたくさんした。恋愛の話もした。自分自身の性格のことや、家族のこと。 本当にたくさんのことを話した。18:30〜翌3:00まで喋りっぱなし。
そこでわたしは確信するんだ。 この人とは絶対に親友になれる人だって。見つけちゃったって。
彼女の一見わからない人見知りなところも、小心なところも、寂しがりやな ところも、なんだかわからないけどものすごく愛しく感じた。 お酒を飲んで陽気になった彼女の裏側にある、そういうすごく人間くさい ところが、どういうわけかわたしに共鳴した。
ひとつ年上の彼女のことを、それまでは苗字に「さん」付けで呼んでた。 でも彼女に、お願いだから苗字を呼び捨てにして!と懇願された。 だけど呼べない。なかなか呼べるもんじゃない。 年上に向かって呼び捨てなんて。
まずはメールで練習した。メールで練習して、頑張って頑張って、やっと 苗字で呼び捨てることができるようになった。 最近なんだよ、そうやって呼び捨てにできるようになったの。 仲良くなった証拠だったんだよ。
いつでも会えると思っていたの。 急がなくたって、いつもそこにいてくれると思っていたの。 あのアパートに行けば、ほんわか酔っ払った彼女が「よく来たな」って はにかんだ笑顔で迎えてくれると思っていたの。
なのに、なんで? なんで自分だけさっさといなくなっちゃうの?
明日も会う予定だったじゃない。 来週も、再来週も、一緒に遊ぶ予定だったじゃない。 一緒に図書館行こうって話したじゃない。 一緒に白鳥町のTSUTAYAに行こうと話したじゃない。 田中まことさんのライブで会えるねって話したじゃない。
もう信じられないよ。あなたがいないなんて。信じたくない。
だから。 自分の目で見るまで信じるもんかって思ってた。 でも彼女の実家につくと、玄関にはモノトーンの忌中札が貼られてた。
足がすくんだ。 ここまで来て、家に入らないと駄々をこねた。 でも「彼女が待ってるから」とYさんに背中を押された。 Yさんがわたしの手を引いて、家の中へ連れて行ってくれた。
初めて入る彼女の実家。
部屋の奥に棺があった。 棺の中なんて見られない。見られるわけなんかない。 棺のそばにも近寄れない。でも見るに見かねたYさんが、困ったように わたしの手をとり、彼女のそばまで連れて行ってくれた。
一緒に行った人たちが棺の中の彼女を見て泣いている。 わたしも近寄る。近寄るけれど足がすくんでそれ以上進めない。
棺の前に、彼女の好きだったラム酒が供えられていた。 そのラム酒で、そこにいるのは本当に彼女かもしれないと思った。 受け止めるしかないかと、ラム酒を見て少し冷静になった。
やっとの思いで、覗き込む。綺麗な色とりどりの花のなかに、彼女はいた。 まるで眠っているかのように目を瞑っている彼女がそこにいた。 お化粧を施されてた彼女は、わたしが知っているそのままの彼女だった。
あぁ、本当に。 本当にいなくなってしまったのか。 ここにいるのが彼女?いつもはにかんだように笑ってた彼女? いやだ、いやだ、いやだ。もういやだ。なぜ。どうして。どうして!
これからもっと仲良くなるはずだったのに。 まだ4ヶ月しか一緒にいないんだよ。 早すぎるよ。いなくなるなら、全部の予定消化してからいなくなってよ。 彼女を責めたり、自分を責めたり、彼女と再び巡り会わせた運命を責めたり、 自分でももうなにがなんだかわからなかった。 全部夢なのかもしれないとも思った。
次の日の晩、お通夜に行った。 昔からの仲間、某酒店、某コミュニティーサイトで知り合った面々が 来ていた。誰もが沈痛な面持ちで、誰もがまだ信じられない様子だった。 遺影の顔がまた彼女らしくなくて、やはりこれは夢なんじゃないかと思った。
お焼香をしに遺影のそばに行った。 遺影って、どうしてわたしだけを見ているような気持ちになるのだろう。 まっすぐにわたしを見る彼女の微笑んだ顔が、憎らしくて悲しくて、 「ほんとあんたはバカだよ」と心の中で叫んだ。
お通夜が終わり車に乗り込むと、外に友人たちが集まっていた。 誰もが真っ直ぐ帰るわけにはいかない感じで、どこかでお酒でも…という ところだったらしい。わたしも便乗して、同じ時を過ごすことにする。
彼女に少しでも触れていたい気持ちは全員同じだった。 彼女の勤めていたビールメーカーのビールが飲めるところにしようと決め、 携帯で探したところは、彼女が以前「美味しかったよ、今度一緒に行こう」と 言っていたジンギスカン屋さんだった。
もうそこしかないと思うと同時に、彼女がそこへ導いてくれたような気が したのはわたしだけだろうか。
お店は混んでいて、5人は難しそうだった。 でもそこじゃないと意味がない。無理やり入り込んで、彼女が美味しいと 言っていたビールを飲む。美味しかった。本当に美味しいビールだった。 「このへんに彼女はいるよね」と笑いあいながら、ばかすかビールを飲み、 肉を食べた。途中胃が痛くて大変だったけど、Nさんからもらった胃薬を 飲んでまた食べた。
まだ帰りたくない。 カラオケに行くことにした。
彼女の好きだったfishmansの「MY LIFE」をSさんが入れた。
♪今はいいよMYLIFE もうすぐさ 悲しい顔の僕らのこと ♪迎えにくるんだ きっと大きな風 迎えに来る ♪声を出したまま あわてずにもう少し
♪あー涙じゃ何も片付かない 焦らずに大きな答えを出す ♪歌う小さな MY LIFE 続いてる oh yeah oh yeah ♪いつも揺れてるMY LIFE 初めての言葉を吐く
涙が溢れる。 聴いてる?そこでちゃんと聴いてる?
聖子マスター(♂)と一緒に、気分を変えて聖子ちゃんを歌う。
♪めぐり会えたね、大切な運命の人に〜 ♪天使がウィンク 勇気を出して笑ってごらん それが君との約束だから〜 ♪涙を糸で繋げば〜 真珠の首飾り〜 ♪別れは〜ひとつの旅立ちだから〜 ♪忘れたい忘れない あなたの笑顔〜
どの歌を聴いても、思い出すのは彼女のことばかりだ。 涙が止まらない。最初から最後までずっと泣いてた。 テッシュじゃ足りなくて、Y嬢からタオルハンカチを貰って泣いた。 彼女のために歌いたかった歌は、泣きじゃくってうまく歌えそうにないので やめた。
おしまいに、某酒店の店主がこの歌を入れた。 彼女の訃報を聞いてから、彼の頭の中をずっとぐるぐるしてた曲らしかった。 RCサクセションの『ヒッピーに捧ぐ』
♪お別れは突然やってきて すぐに済んでしまった ♪いつものようななにげない朝は 知らん顔してぼくを起こした
♪電車は動きだした 豚どもを乗せて ぼくを乗せて ♪次の駅でぼくは降りてしまった ♪30分泣いた 涙をふいて電車に乗りこんだ
♪遅刻してホールについた ♪ぼくらは歌い出した 君に聞こえるように 声を張り上げて ♪検屍官と市役所は 君が死んだなんていうのさ ♪明日また楽屋で会おう 新しいギターを見せてあげる まるで今のわたしたちのためにあるような曲だった。 初めて聴いた曲だったけれど、沁みた。 店主が泣いていた。わたしも泣いた。店主と抱き合って泣いた。 耳元で「みっちーも頑張れ」と言われて、わたしは「うん」と頷いた。 きっと彼女もこの部屋のどこかで泣いている。
彼女はいつもお酒でやらかしたことを、くよくよと反省していた。 酔って、大騒ぎして、何かをやらかしてから、ひとり反省してる人だった。 お酒での失敗なんて、山ほどあるんだよ、誰だって。
今もきっと反省してるんでしょう? ことの大きさに気がついて「いや〜、とんでもないことしちゃったよ〜」 「ほんっとアタシってバカだよねぇ〜〜〜」って。 ほんとバカだよ、あんたは。バカすぎて言葉もでない。
だから。
人生て辛いことばかりだけど、でもきっとステキなことなんだとわたしが 証明してみせる。こんな素晴らしいことが人生にはあるんだよって、 わたしがあんたの分まで生きて、証明してみせる。 後悔したって遅いんだからね。本当にもう遅いんだから。
あー、ごめん。わたしって本当に自分ばっかりだ。 本当は、わたしはあなたが苦しみから解放されていたらそれでいいんだよ。 安らかに穏やかに、天国で好きなお酒でも飲みながら、文庫本持ってさ、 「みっちー、死んじゃうとさ〜、お経ってほんと有難く聞こえるんだよ!」 なんて楽しく笑っていてくれれば、それでいいの。
わたしたちはわたしたちで、楽しくやるよ。 あなたができなかった分まで、思う存分楽しむよ。 お酒もいっぱい飲むし、映画も山ほど観て、本もたくさん読むよ。 今は手始めに、あなたが好きな町田康を読み始めたよ。
もうすぐ桜が咲くよ。お花見をするから遊びにおいでね。 みんな待っているから。みんなで待ってるから。 コップ、あなたのために必ず1つ用意するからね。
お願いだから安らかに。 天国での人生が、素晴らしいものでありますよう。 心から、心から、わたしは願ってる。
わたしの文章を好きだと言ってくれたあなたのために、文章にしてみた。 いまどきの天国にはインターネットぐらいあるんでしょ? ちゃんと読んで、感想ちょうだいよ。
ばいばい。
少しの間だけ、ばいばい。
いつかまた会おう。またお酒飲んで、大騒ぎしよう。やくそく。
P.S.あなたの死をきっかけに、知り合った人がたくさんできたよ。 皮肉とは思わない。あなたが引き合わせてくれたんだなーと思うんだ。
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