『トニー滝谷』のこと。
『トニー滝谷』のDVDを観た。
観始めてすぐ坂本龍一の旋律が響いたときから、わたしの奥から 何かがこみあげ、一粒の涙となった。映画が始まって1分もして いないのに。
子供のトニーが作る砂の船。
遠くにかすむ街の灯が彼の孤独を思い起こさせ、劇場公開時、 札幌で観たあの気持ちが蘇えり、膨れ上がってしまったためだ。
闇と闇がつなぐエピソード。 彼の背後にある大きな窓。揺れる街の灯。 彼の閉塞感と、窓の外にある広い世界の対比。 1人の女性に出会い初めて気づく渇望。 空の青と、雲の白のコントラスト。 風の吹き抜ける場所。彼女の髪を揺らす、心を揺らす風。 孤独を埋めるもの。隙間を埋める服。 サボテンのアシンメトリー。 喪失から生まれた淡く輪郭のぼやけた感覚。 坂の上にある場所。坂を上る人。遠くに見える煙突。 透明感。けれどすり硝子のような靄。
どうしよう。
孤独を孤独と気づかずに生きてきたトニー滝谷。 彼の心情がじわりじわりと浸透してくる。 どうしよう、息ができない。
一時、DVDを止め、友人にメールを送る。 気持ちを落ち着けて、また観始める。 今日挽立ての珈琲を淹れて。
二度目の『トニー滝谷』は効く。 一度目よりずっとずっと。
それからメイキングを観る。 これって全てがオープンセット? 噂では聞いていたけど、まさか、まさかのメイキングに、 口をぽっかり開けたまま見入っていた。 「あのシーン」に対する監督や女優の思い入れに、もう一度 見直し、インタビューを観てなるほどなぁ…と感心し、 今日の午後は全て『トニー滝谷』に費やした。
しばらくは封印する。 大切な映画というものは、たぶんそうすることで深みを増すと 思うから。だけどわたしのすぐ側にあり、取り出したいときに いつでも取り出せるように、DVDというものはあるように思う。
たぶん。
全く理解できないという人もいると思う。 まったりとしすぎていて眠くなったという人も。 大学生のイッセイ尾形が受け付けられないとか(それわたし^^;) 抑揚がなくてつまらなかったとか。
でもわたしは好きだ。すごくすごく好きだ。 心の奥底に鍵をかけてしまいこんでおきたいくらい。
この映画を好きだという人、 この文を読んで観たいと思ってくれた人、 少しおしゃべりしませんか、この静謐で閉ざされた世界について。
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