comfortable diary



岩田くん。(仮名)

小学校の頃、好きな男の子がいましてね。
仮に名前を岩田くんとしましょうか。
岩田くんはそれはもう全女子のアイドルでしたの。
成績優秀、運動神経抜群、イケメン、学級委員、リーダー的存在。

クラス一番のガキ大将でさえ彼には一目置いていたし、とにかく
完璧だったのだ。私も類にもれず、彼のファン。

一度、男子が遊びで投げた石が、私の目のすぐ下に直撃したことが
ある。ものすごい衝撃で、しかも眼球からほんのすぐ下のところ
だったため目も開けられず、私は泣きながらその場に座り込んで
しまった。

するとその岩田くんは、遥か向こうから颯爽と駆け寄り、みんなが
オロオロするなか、さっと私の手を握り、保健室まで手を引っ張り
連れて行ってくれたのだ。まるで少女マンガの世界。
岩田くんがキャンディ・キャンディのアンソニーに見えたっけ。

その後クラス替えがあり、岩田くんとは離れ離れ。

私にも他に好きな人ができて、岩田くんのことは忘れてしまった。
しょせん岩田くんは高嶺の花。
あたしには転校生のSくんがいるわっ!ってな具合に。

中学にあがり、ますます彼とは縁遠くなった。
その頃から彼は、小学校のあの輝きが消えた。
誰もが認めるリーダーがリーダーではなくなった。

不良がカッコよくて、一生懸命なことが揶揄された時代。
彼は持ち前のあの責任感が、逆に自分の首を絞めたのだろう。
どんどん影は薄くなっていき、太り、ついにはどこの高校に行った
のかさえわからないくらい、彼の地位は失墜したのだった。
噂でしかないけれど、彼はココロの病気になったと聞いた…。

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今日、母があたしに話しかけてきた。

「今日ね、岩田くんのお母さんに逢ったよ」と。

うちの母と彼のお母さんはPTAを通じて、顔見知りだったのだ。
世間話をしたあと、岩田くんは今どうしているかと母は尋ねた。

まだ療養しているらしいのだけど、詳しいことは濁されたと言って
いた。彼の輝かしい過去を知っているだけに、そんな彼に一時でも
淡いコイゴコロを抱いていただけに、なんだかとても切なくなった。

あたしの知っている岩田くんは、みんなのアイドルだった。
いつでもみんなの中心にいた。
彼はあの頃の自分に戻りたいと思っているだろうか。
それとも今の自分を認めようと必死なのだろうか。

秋だからかな、ちょっぴり胸が痛い。




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2003年10月30日(木)




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