日々の泡・あるいは魚の寝言

2008年05月27日(火) 羽田より

☆羽田第一ターミナルエアポートラウンジ南からです。
窓の外には飛行機が並び、どんどん空に舞い上がっていっています。

ラウンジ南は、ゲートの「向こう」のラウンジ。新しくて静かで、きれいです。私みたいに、小さなパソコンを持ち込んでいるお兄さんやお父さんたちが何人かいて、あちこちで、キーボードをたたく音が響いています。
あとは、新聞よんでいる人とか、テレビのニュースを見ている人とか。ラウンジは飲み物無料なので、のどを潤しているひとたちもいますね。みなさんお仕事お疲れ様です。

窓の外で、飛行機の整備をしたり、荷物を積み込んでいるひとたちの姿もみえて、働く人々は美しいなあ、という感じです。
やっぱり、おとなは遊んでるところより、働いてるところが素敵だな。

☆仕事といえば。
昨日、ポプラさんとジャイブさんにつれられて、表参道のクレヨンハウスにご挨拶に行ってきました。
文庫のたそがれ堂のサイン本を十冊作って、なぜか猫の絵とか描いてきました。都内在住でサイン入りたそがれ堂(ジャイブ版)がほしい方は、クレヨンハウスさんへどうぞ。

実は、クレヨンハウスは、生涯で二度目の訪問でした。
前にいったときは、たしか椋賞の授賞式の時。
新人作家だった私は、当時のあかねの担当編集者Hさんに引率されて、びくびくしながら、表参道のあのきれいなお店に行ったのでした。
「このお店は、きちんと選書するから、質がいい児童文学しかおいてもらえないんだからね?」とか念を押され、お店の方々に挨拶をし、そして、「ちいさいえりちゃん」が、お店の棚にあるのをみて、感動したのでした。

あのとき、帰り道で、骨董品やさんに入って、古い青いガラスのブローチがたしか二万円くらいだったのかな?
当時の私には、贅沢で高くて、とても買えませんでした。

あれから、十数年もたって。
久しぶりに二度目でうかがったクレヨンハウス。
若い店員さんが、喜んで出迎えてくださって、「あの、よかったら本にサインをお願いします」と、いわれて。
「私なんかのサインでよければ。あ、猫の絵でもおいれしましょうか?」と、猫の絵入りサイン本を作成して。

で、その途中で、ふと、「私の本、ほんとにクレヨンハウスにあるんですか?」と、どきどきしながらきいたんですが…

なぜか怪訝そうな顔をする店員さん。
若い担当のお嬢さん二人。

…え? えーと?

いやだって、昔私の本をおいてくださってたのは知ってるけど、いまも私なんかの本があるかどうか、私は知らないし自信ないから…

…と思ったんだけど。

帰りがけ、ちゃんとシェーラが全巻そろってるところとか、見せていただいて(画像、あとでアップしますね)、これで文庫たそがれ堂も十冊並ぶし、よかったなあとか思いながら、お店を出たのですが。

表参道を歩きながら、担当のお嬢さんたちと会話しているうちに、ゆるゆると気づきました。

ああそうかあ。年月がたったんだ。
私が書いた本は、大きな児童書専門店なら、「あるのがあたりまえ」になっていたんだ。
「私の本、このお店にあるんですか?」って、真逆ないみでとると、すごい失礼な意味になる質問だったんだ…

担当さん二人に、言葉の意味を、いいわけ混じりで説明しながら、私は、十数年前に、この同じ道を歩いていただろう、新人作家だった自分が、いまもそこに見えるような気がして、不思議だったのでした。
時間はちょうどたそがれどき。
表参道には、街角にもケヤキ並木にも初夏の透明ないろの光と影が落ちていて。

まるで魔法のようだなあ、と、私は思いながら歩いていたのでした。


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chayka [HOMEPAGE]