昨日、玄関で、蝶が死んでいました。 薄い羽の色の、蛇の目蝶でした。 うちの玄関には、少し大きめの靴箱があって、その上に招き猫やら兎の人形、花などを飾っているスペースがあるのですが、そこに、おいていた郵便物の上に、ぽとりと落ちたようにして死んでいました。
羽にも体にも傷は見えなくて、羽を閉じ、手足をきっちりと組んで死んでいたので、事故や、なにかに襲われて死んだということではないと思います。 それにしても、なんでまたマンションの二階の閉ざされた玄関に、蝶が迷い込んで死んでいたのか。 どのみち、外に出たいだろうとおもって、私の部屋のベランダの、ゼラニウムやらなにやらが茂るあたりに、そっとのせてやりました。 目も触角も、胸のあたりのふわふわしたところも、細い足もかわいくて、どうにも切なかったです。
ただ、その蝶はなにしろ、蛇の目蝶。 私は、蝶は好きですが、この蛇の目蝶だけは、柄が正視できないほど苦手で、怖いので。 羽に目をあわせないようにして、お別れしたのでした。
けれどだけど、もし生きているときにあえたら、もしかして、うちのマンションに迷い込んで、外に出られなくて苦しんでいた蝶だったとしたら、助けてあげたかったです。
今日になって、ふと思い出したのが、このあいだ、都内にいるときのこと。 新宿の、とあるホテルの喫茶室で、ある朝に、童心社の担当氏とうちあわせしていたのですが、そのときのことです。 ふと彼が、「あ、蝶が」と、上の方を見上げていったのです。 視線を追って見上げると、吹き抜けになったような、高い場所に、茶色い影がちらりと見えて、蛇の目蝶だとおもいました。 あの高さでは、ホテルの人でないと助けられないし、いやホテルの人でも、どうやって助けるんだろう、と私はそのときは思って、そのまま、打ち合わせに戻りました。
私はその日がチェックアウトの日で、彼もそのあとすぐに、ほかの人との待ち合わせがありました。ふたりとも、忙しい日でした。 喫茶室を出て別れたあとで、私は、「あとで時間ができたら、ホテルの人に相談してみるかな」と思いました。そのホテルのそばにある別のホテルに連泊していたからです。本当にご近所のホテルだったから、いつでも時間があれば、足を伸ばせるはずのところでした。 助けられるものかどうかわからないけれど、相談はしてみよう、と思って。
私は、外のいろんな場所で、閉じこめられている小さな生き物にたまに遭遇します。そういうとき、自力で助けられれば助けるし、その場にいる、お店の人やなにかの力が借りられれば、助けを乞うこともあります。コンビニその他、お店の関係の方々は、そういうときは、積極的に助けてくださる方が多いし、お店の奥から不思議な七つ道具(高いところまで届く謎の棒とか)をだしてきてくれたりすることもあるので、それがまた楽しかったりもします。 逃がしたあとは、みていたほかの人も含めて、笑顔になれますし。
ホテルの場合も、ホテルのかたたちに相談したら、できるだけのことはしてくれるだろうと思いました。 そもそも相手は一流のシティホテル。自分のホテルの宿泊客からの願いでなくても、きっと耳を傾けてくれるとおもいました。
そう思って、思ったことで、安心して。 結果的に、気がつくと、私はそのまま、蝶のことを忘れて長崎に帰ってきてしまったのです。
あの蝶は、どうなったでしょう。 ホテルの方が逃がしてくださったと、そう思ってはいますけれど、蝶のことを忘れていたと思いだしたときの、心を灼くような焦りと痛みは、いまもずっと残っています。空港行きのリムジンバスの中で、思い出したのでした。
そのときも、いまも思うのは、もしあの蝶が蛇の目蝶じゃなくて、もっと「私好みの」かわいいきれいな蝶だったら、私はあの蝶のことを、もっと大事に心配していたのではないだろうか、ということです。 あれがアゲハや、ルリタテハかなにか、きれいな蝶だったら、私は、担当氏には、少しの間ごめんなさいをしてでも、喫茶店のいすを立ち上がって、蝶を助けにいっていたのではないかということです。 もしそうしていたら、彼もいきものが好きな優しい人なので、いっしょに助けようとしてくれて、結果、蝶はその場で外に逃げられたかもしれません。 ひょっとしたら彼だって、私に遠慮して、蝶を助けたいといえなかったのかもしれないのですし。
羽の模様が苦手だから、怖いからというだけの理由で、私はあの蝶を見殺しにしてしまったのかもしれない……。
そんなことを思っていたので、思い出したので。 ふと、もしかして、玄関で死んでいた蝶が、なにかしら次元を越えて飛んできた、あの時の蝶だったとしたら… せめて今度は外に出してあげられて、よかったと思いました。
<追記>しかしいま自分につっこみを入れたいのは、空港からでも、ホテルに電話すればよかったのじゃないか、ということです…。そのときは、おもいつかなかったなあ。 現在、日曜日のもうじき朝。「ミラクル2」のつづきを書いています。というより、イントロを書き直しています。 締め切りに間に合うのでしょうか。いや、間に合わせて見せなくては(涙)。 でも、書いているということは、やはりたのしいです。
あ、かえるさんからたずねられたので、その後の<じんましん日記>(笑)。 おととい、たぶん酷暑がきっかけで、右のお尻(笑)に出ました。でもそれくらいで、今回は広がらないのでよかったです。ご心配いただいたみなさま、ありがとうございます。たぶん、もうしばらくは落ち着くでしょう。 やはり、数日のホテルへの滞在が、よい休暇になったようです^^
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