日々の泡・あるいは魚の寝言

2006年07月29日(土) 蝶の話

昨日、玄関で、蝶が死んでいました。
薄い羽の色の、蛇の目蝶でした。
うちの玄関には、少し大きめの靴箱があって、その上に招き猫やら兎の人形、花などを飾っているスペースがあるのですが、そこに、おいていた郵便物の上に、ぽとりと落ちたようにして死んでいました。

羽にも体にも傷は見えなくて、羽を閉じ、手足をきっちりと組んで死んでいたので、事故や、なにかに襲われて死んだということではないと思います。
それにしても、なんでまたマンションの二階の閉ざされた玄関に、蝶が迷い込んで死んでいたのか。
どのみち、外に出たいだろうとおもって、私の部屋のベランダの、ゼラニウムやらなにやらが茂るあたりに、そっとのせてやりました。
目も触角も、胸のあたりのふわふわしたところも、細い足もかわいくて、どうにも切なかったです。

ただ、その蝶はなにしろ、蛇の目蝶。
私は、蝶は好きですが、この蛇の目蝶だけは、柄が正視できないほど苦手で、怖いので。
羽に目をあわせないようにして、お別れしたのでした。

けれどだけど、もし生きているときにあえたら、もしかして、うちのマンションに迷い込んで、外に出られなくて苦しんでいた蝶だったとしたら、助けてあげたかったです。

今日になって、ふと思い出したのが、このあいだ、都内にいるときのこと。
新宿の、とあるホテルの喫茶室で、ある朝に、童心社の担当氏とうちあわせしていたのですが、そのときのことです。
ふと彼が、「あ、蝶が」と、上の方を見上げていったのです。
視線を追って見上げると、吹き抜けになったような、高い場所に、茶色い影がちらりと見えて、蛇の目蝶だとおもいました。
あの高さでは、ホテルの人でないと助けられないし、いやホテルの人でも、どうやって助けるんだろう、と私はそのときは思って、そのまま、打ち合わせに戻りました。

私はその日がチェックアウトの日で、彼もそのあとすぐに、ほかの人との待ち合わせがありました。ふたりとも、忙しい日でした。
喫茶室を出て別れたあとで、私は、「あとで時間ができたら、ホテルの人に相談してみるかな」と思いました。そのホテルのそばにある別のホテルに連泊していたからです。本当にご近所のホテルだったから、いつでも時間があれば、足を伸ばせるはずのところでした。
助けられるものかどうかわからないけれど、相談はしてみよう、と思って。

私は、外のいろんな場所で、閉じこめられている小さな生き物にたまに遭遇します。そういうとき、自力で助けられれば助けるし、その場にいる、お店の人やなにかの力が借りられれば、助けを乞うこともあります。コンビニその他、お店の関係の方々は、そういうときは、積極的に助けてくださる方が多いし、お店の奥から不思議な七つ道具(高いところまで届く謎の棒とか)をだしてきてくれたりすることもあるので、それがまた楽しかったりもします。
逃がしたあとは、みていたほかの人も含めて、笑顔になれますし。

ホテルの場合も、ホテルのかたたちに相談したら、できるだけのことはしてくれるだろうと思いました。
そもそも相手は一流のシティホテル。自分のホテルの宿泊客からの願いでなくても、きっと耳を傾けてくれるとおもいました。

そう思って、思ったことで、安心して。
結果的に、気がつくと、私はそのまま、蝶のことを忘れて長崎に帰ってきてしまったのです。

あの蝶は、どうなったでしょう。
ホテルの方が逃がしてくださったと、そう思ってはいますけれど、蝶のことを忘れていたと思いだしたときの、心を灼くような焦りと痛みは、いまもずっと残っています。空港行きのリムジンバスの中で、思い出したのでした。

そのときも、いまも思うのは、もしあの蝶が蛇の目蝶じゃなくて、もっと「私好みの」かわいいきれいな蝶だったら、私はあの蝶のことを、もっと大事に心配していたのではないだろうか、ということです。
あれがアゲハや、ルリタテハかなにか、きれいな蝶だったら、私は、担当氏には、少しの間ごめんなさいをしてでも、喫茶店のいすを立ち上がって、蝶を助けにいっていたのではないかということです。
もしそうしていたら、彼もいきものが好きな優しい人なので、いっしょに助けようとしてくれて、結果、蝶はその場で外に逃げられたかもしれません。
ひょっとしたら彼だって、私に遠慮して、蝶を助けたいといえなかったのかもしれないのですし。

羽の模様が苦手だから、怖いからというだけの理由で、私はあの蝶を見殺しにしてしまったのかもしれない……。

そんなことを思っていたので、思い出したので。
ふと、もしかして、玄関で死んでいた蝶が、なにかしら次元を越えて飛んできた、あの時の蝶だったとしたら…
せめて今度は外に出してあげられて、よかったと思いました。

<追記>しかしいま自分につっこみを入れたいのは、空港からでも、ホテルに電話すればよかったのじゃないか、ということです…。そのときは、おもいつかなかったなあ。
現在、日曜日のもうじき朝。「ミラクル2」のつづきを書いています。というより、イントロを書き直しています。
締め切りに間に合うのでしょうか。いや、間に合わせて見せなくては(涙)。
でも、書いているということは、やはりたのしいです。

あ、かえるさんからたずねられたので、その後の<じんましん日記>(笑)。
おととい、たぶん酷暑がきっかけで、右のお尻(笑)に出ました。でもそれくらいで、今回は広がらないのでよかったです。ご心配いただいたみなさま、ありがとうございます。たぶん、もうしばらくは落ち着くでしょう。
やはり、数日のホテルへの滞在が、よい休暇になったようです^^


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