日々の泡・あるいは魚の寝言

2005年04月08日(金) あの遠い日々

天空のミラクルがもうじき書店に並ぶにあたって、思い出すのは、もう二年、いえ三年も前のことになるのかな、前の担当編集者N嬢との思い出です。
実は、ヒロインさやかちゃんの名付け親は、彼女でした。

今回やっと走り出したヤングアダルト向け文庫の企画、数年前、それがそもそも立ち上がったときにいただいた依頼、それで書き上げた原稿が、ミラクルでした。
年末に書き上がり、すぐにメールで送って、彼女は新年に原稿を読み、新宿の街を歩きながら、携帯メールで、ぽつぽつと「面白かった、泣きました。私はこの物語が大好きです」と、感想を送ってきてくれたのでした。
あの頃は彼女はドコモの携帯を使っていて、250字ずつ、何回も何回も、文章を切って、そうして感想を送ってくれたのでした。

その後、文庫はなかなか走り出さないまま、Nさんとの打ち合わせを続けていましたが、彼女はその冬から仕事が忙しすぎて、体と心を痛め、私もまた、いろいろあって、倒れそうになっていた時期でした。
春の日に、ふたりで、西新宿の街角を歩きながら、住友三角ビルのあたりの屋外のカフェでお茶をしながら、私がぽつりと、「限界まで働いて死んじゃっても」といったら、「そんなこといわないでください」と、涙ぐんでいってくれたりしたのでした。
あの頃は、ふたりとも、陽射しがまぶしすぎて、うつむき気味に話していたような気がします。
その後、彼女は、私の担当ではなくなり、違う部署に移ったのでした。

年月が過ぎ、文庫の企画はついに走り出し、「天空のミラクル」は、ドリームスマッシュの一冊目の本として、書店に並ぶことになりました。
ポプラ社の本は、奥付に担当編集者の名前が書かれるのですが、そこには、現担当編集者がんばりやさんのKさんの名前が記されることになります。
それはもちろん、当たり前のことです、彼女には感謝しているのですが…
でも、本当は、あの本には、見えないインクで、Nさんの名前が記されているのです。

ありがとう、Nさん。
桜の花が咲く時期、今の私は元気です。あの頃は考えられなかったくらいに、幸せです。好きな人もいるしね、ははは。

あなたは、元気かな? 少しずつ元気になっていたから、次にあうときは、きっと、もっと元気に戻っているよね。
本ができあがったら、誰よりもあなたに、お礼をいいたいです。
ありがとう。あれはあなたのために、書いた物語でした。
またいつの日か、きっと、ふたりで本を作りましょうね。




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