日々の泡・あるいは魚の寝言

2002年01月05日(土) 私の祈りは

私の祈りは

道ばたで 誰にも気づかれずに死んでゆく子猫のために

まちがったことをしていないのに
おとなたちにわかってもらえずに泣いている
子どものために

どこか遠くの国で
守ってあげたい誰かのために 何もできずに
無力な自分を 呪っている人のために

それからまだ 私に祈りの時間があれば

私の本を読んでくれている人のために

私が大好きな人のために

私は 私のためには祈らない
私のためには 言葉はいらない

私のためには 誰も祈らないで

私は 私がとるにたらないものだということを知っている
自分に 生きているだけの価値がないということをわかっている
自分の弱さも醜さもみんな知っている

だから 誰かに優しい言葉をかけてもらうたびに
もうしわけなくて 身が縮んでいく
誰かに 愛情をそそがれるたびに
心が 傷だらけになっていく

だから 私のことは 放っておいて
そこにいるのがわかっていても 黙って微笑んでいて
見えないふりをして 声もかけないで

誰かが幸せならば 私は 生きていけるから
それは知らない人でもいい 遠くの人の話でもいい
どこかで誰かが笑っていられるなら そんな話を聞けたなら
私も幸せでいられるから

いつか私は 少しずつ消えてゆき 日に透けてきらめく埃のようになって
私の祈りの言葉だけが この世界に残ればいい
私の言葉と 思いだけが 風のように世界をめぐればいい

その時はじめて 私は本当に 自由になれるのかもしれない


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