ぬるめにいれたコーヒーに、カルーアのリキュールを落として ノートパソコンの光る画面を見ている
少しずつ少しずつ 字を刻むように書いていく
足はこの部屋の床の上にあるけれど いつもどこか知らない世界の 崖の上のそのぎりぎりの道を歩いている タロットカードの「愚者」みたいに ふわふわと危ない足取りで歩いている
物語を書くことは楽しくて そうして私は自分が書く作品を好きだけれど でもいつもこの物語はどこの星から降ってくるのだろうと思う それがわからないのは なのに星を待つ力を持っているというのは その苦しみは たぶん同じ道を行く人にしかわからない
崖際で私は星を待つ すぐそばに怖いものが待っているのを知りながら 崖の下にすいこまれそうになりながら 空を見上げて 私の元へ降ってくる光を待っている
光を受け止めて 光を紡ぎ続ける
いつか星が降ることを信じられなくなる日がくるのだろうか? 崖のそばにいるのが怖くなる時が この道を行くのが怖くなる日が
私にはわからない いまはだから 星の光を抱きしめて ひとりで歩いていこう
どんなにたくさんの友だちがいたって どんなにはげましてもらったって この道を行くのは私ひとり 優しい言葉は風のように耳元を通り過ぎ 私を前へと進めてくれるけれど 歩くのは私 ずっとずっと ひとりきりの道
でもお話を紡ぎ終われば 待ってくれている人たちがいるから 私はこの道を歩いていこう たくさんの星をてのひらにうけて
短い旅がおわり 暖かな世界に帰る そしてまた 次の旅が始まる そのくりかえしを 私は生き続ける 星の光を待ちながら
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