西方見聞録...マルコ

 

 

それはちがうよトットちゃん - 2005年11月12日(土)

 なんだか古い話になって恐縮でございます。ちょっとこのごろ無意味に忙しかったので日記滞っておりました。

 さてマルコの愛読日記のうちの2つ
いいことあった日記MagMell Diaryであいついでユニセフについて取り上げておられました。10月の末のことです。マルコ的にいろいろ思うことはあるのだけど一番、「ううむ」と思ったのは両日記が取り上げていたブログ(このブログはリンクはりません。こういうまことしやかなトンデモ情報普及に荷担したくないので)中の文章で

>頂いた募金は一円も無駄にしないで現地に届けたい(黒柳徹子・談)

の箇所。

 それはまあそうなんだけど、それではいけないのだよ(←結局どっちだ)。トットちゃん。という思いが喉元までせりあがってまいりました。

 トットちゃんの言説は市民活動に対する無理解な人に良く見られる傾向の言説でございます。ちょっこりこんな世界の片隅の日記で批判させていただきたいと思います。

(間違いその一) 事業費と管理費について
現地に一円でも多くって?
えーっとお金だけもってったらなにもかもうまく行くと思うのは大間違いです。お金が確実に必要とする人に届くにはそのお金を流すシステム作りが肝要です。で実際に「被支援者が裨益するお金の部分」(一括して事業費)と「その事業を円滑に管理するための人件費や輸送費や募金を呼びかけるための広報費、事業がうまく行ったか次回への反省点はどこか確認するための事業評価費等などの部分」(一括して管理費)の2種類のお金が必要になるわけです。管理費にしっかりお金を取らないような団体の活動は信用してはなりません。日本における市民活動への寄付行動を見ているととてもこの事業費偏重、管理費軽視の傾向が見て取られます。欧米などの市民セクターが発達しているところでは寄付の50%管理費とかは当然です。それに納得して市民は寄付をするのです。(北欧では70%管理費とかそういうところもたくさんあるのですが、まあそれはちょっとやりすぎのような気もします。)
日本の寄付者の感覚として管理費が10%、20%であってもゆるさん!みたいな傾向があり、この傾向を体現し、助長しているのがトットちゃんの呼びかけなのであります。政府のODAで管理費と事業費の析出をさせて御覧なさい。ものすごい管理費だと思いますよ。あと国連とかもすごそうですね。でもそっちには文句を言わずに莫大な税金を差し出しているのに、民間への寄付行為となると寄付金への過剰なまでのオーナーシップを発揮するのはなかなか面白い日本人の心性だと思います。

(間違いその2)民間の国際協力機関にドネイションする意義について。

 先進国の人間が国際協力NGOに資金提供する目的と言うのはなんでしょうか。いっぱいあると思うけど私が重要と思うのは主に次の2つのことです。

1)北から南へのオールタナティブな資金の流れを作り出すこと

2)NGOにアクセスすることで南の情報が北側に伝わり、その情報をもとに南の状況を改善するために北側市民として出来ることを考えるきっかけにすること

だと思います。2)の方は一般には開発教育と呼ばれています。「北側市民に出来ること」というのは例えば「消費者として世界経済ひいては南の国に与えている影響に気付き、良い消費を行うことで、南北の不均衡を是正する」。あとは「定期的な寄付行動を行うこと」。また「そうした自分の知った事実を周囲に伝えていくこと」。なんかでしょうかね。

で、日本ユニセフ協会という日本の民間NGOへの寄付行為について考えると、日本ユニセフ協会は「2)の開発教育」に関して大変に優れた団体なのです。このページを見てください。学校の先生なんかが途上国の状況を話す時このページはすごく頼りになります。

 また日本ユニセフ協会の職員のみなさんは私がお話しを聞いたときはスタッフ全員が学校教師経験者で、そのすぐれた説明能力で全国の学校へ出張講演を行ってました。日本の学校に対して組織的に開発教育を行っているんですわ。またユニセフ本部が開発した参加型の開発教育の教材を日本語に翻訳・出版するなどしており、これも大変優れています。マルコも専門学校でも大学でもそうした日本ユニセフ協会が紹介している教材を使って参加型のアクティビティを実施しています。

 とくに「コーヒーゲーム」という南米のコーヒー農家がグローバル経済の中でいかに翻弄されるか、コーヒー農家になって4年間の収穫をしながら国際企業と渡り合い、年間30ドルのもうけを出してどうにか長男だけでも小学校にやろうと格闘するというゲームがあります。これを行うと南北経済の中でいかに一次産品の生産者が不利な条件の中、生産活動を行っているか良くわかります。たいていのプレーヤーは年間30ドルのもうけが出せずに、借金のカタに自作農から小作に転落してしまうという大変楽しいゲームです。そして日本がアメリカに次ぐ、世界第2位のコーヒー消費国としてそのコーヒー農家の苦しみにいかにダイレクトに関わっているかもわかる仕組みになっています。
 この教材を講義で使うようになって以来、マルコは家ではコーヒーはフェアトレードコーヒーをなるたけ飲むように心がけていますし、私のこの講義に出た学生の何人かはフェアトレードコーヒー愛用者になっています。
 とにかく日本ユニセフ協会は豊富な資料をもとに数々の優れた開発教材を日本社会に提供しつづけており、マルコはその点でこの団体を高く評価しています。日本ユニセフ協会自体への寄付だったら進んでしようと思います。

 駄菓子菓子、NGOに資金提供する意義の「1、北から南へのオールタナティブな資金の流れを作り出すこと」に関しては日本ユニセフ協会は既存の国連団体(国連ユニセフ)にお金を預けるというだけで、オールタナティブなお金の流れを創出するにいたってないのが、つらいところです。国連のお金の流れは基本的に2国間援助のお金の流れと現在そう大して違いません。相手国政府からその下の自治体へとお金をおとしていく方法です。政府の利益供与に繋がれない先住民や被抑圧的な位置にいる最も支援の必要な人々にはお金は流れません。そして税金からODAというかたちで、すでにお金が流れています。ODAには2国間援助と並んで国連拠出金も払っているのでそんなに何重にも同じルートでお金を落とす必要はないのではないかと思います。というのは援助資金の流れにはたくさんの落とし穴があるので流れるお金のルートは出来るだけたくさんあったほうがどれかはたどり着くのです。すでに利権が発生してしまっている公的ルートよりもそれこそ直接現地NGOとのタイアップでお金が流れていく民間の国際協力団体の方が効率良く草の根にお金が届く確率は高いと私としては思います。(まあこのときよく団体を吟味することをお勧めします)今お勧めなのは日本のNGO御三家(JVC、シャプラニール、SVA)と外資の2台巨頭(プランインタナショナル、ワールドヴジョン)でしょうかね。マルコの古巣もオールタナティブなお金の流れの創出という点ではなかなか健闘してます。ここでは名前を書かないけど。

 まあそんなわけで、トットちゃんが一円でも多く云々と仰ってるのは、何重にも、とっても間違いだと思います。1人のスタンドプレーで世界の貧困は解決しません。お金のながれのシステムつくりと貧困につながる先進国の消費行動への警鐘という2つの大きな目的を彼女は見失い、貧困問題に取り組んでいる訳です。

 たいていNGOに寄付するのと同時に途上国の情報を伝えてくれるニュースレターの類が団体から届けられますのでそういうのは良く読みましょう。ちゃんと情報を出している団体は良い団体です。そしてそのニュースレターから感じて、今途上国の問題の原因となっている先進国の過剰消費について考えて行動を起こすのがよろしいんではないかと思います。

 いろんな立場の人がそれぞれできる消費行動の変容に取り組んでみては良いんではないかと思います。

 寄付行動も消費行動の変容も両方とも微々たるものですが、ちりも積もればなんとやらなので積もらせていきたいっす。

 トットチャンの訴えは積もらないところがポイントです。

追記:なんか長々と書いた後でトットちゃん発言の何にマルコが熱くなって怒ってるのか背景が伝わりにくいとおもったので、私が怒ったトット発言が載ってるブログのURLも載せときます。
ttp://ameblo.jp/ika-ring-fuck-wb/entry-10005278993.html




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