西方見聞録...マルコ

 

 

4月の晴れた空のした(3)〜情報戦としての人質事件 - 2004年05月31日(月)

6月だっての、もう。

前回ちょろっと予告して以来、ずいぶん日にちが経っちゃいましたな。まあいろいろと地下活動に勤しんでたのと、研究助成金100万円GETを目指して野望の申請書書きなんかしてました。しかし地下活動に忙しかったので3日で申請書書いて誤字脱字もチェックせずに某財団に送っちゃったのでした>申請書。もし採択されたら日給30万円状態ですな。ほとんど犯罪です。でも採択されたらフラフラ就職活動せずに研究するので採択して〜、と文殊菩薩にお祈りする信心ぶかいマルコなのでした。ええと何の話だっけ?

そうそう、イラク人質事件でしたな。

A.世界はファルージャを注目した

あの人質事件は直前に起きていた米軍によるファルージャ掃討と深く関係している。ファルージャでの虐殺に世界の注目を集めるための地元勢力による情報戦的様相を呈していたように思う。日本も他の国もメディアはイラクに釘付けになり、ファルージャでの米軍の自制をいろんなステークホルダー(利害関係者)が呼びかけるなど人質事件を起こした側のねらいはかなりイイ線で的中した。

またあの事件を機会に「中東の反米武装勢力はみんなアルカイダ」という1面的な見方にも1石を投じた。誘拐実行犯とそれを支援する地元住民、さらに実行犯に自制を呼びかける聖職者会議などさまざまな登場人物が現れた。バクダットの地元の声も、「自衛隊を駐留させているからこんなことになるんだ」とか「テレビで泣いている家族を見た。かわいそうだ、民間人なんだから解放するべきだ」など様々な声があった。そして誘拐実行犯が人質となった3人を解放したことで「話の通じるイラク人」の印象は強まり、さらに解放声明では「米国の圧迫に苦しむ日本の友人に要求する。イラクから日本の部隊を撤退させるように日本政府に圧力をかけること。」と「共闘」を呼びかける。占領下の敗戦国市民とレジスタンス兵士の声がこれだけ力強く世界に向けて発信されたと言う点でも「3人を生かして返す」という戦略は成功だったと思う。もし殺しちゃったら、狂信的テロリストのたわごとと処理されただろう。

 
B.日本側特に人質家族の戦った情報戦

 私が一番よくわからなかったのが人質家族への風当たりだ。私はテレビで記者会見を見ていなかった。家族の記者会見と言うのは私はアルジャジーラやアルアラビアの電波に乗せて武装勢力に見せるためにやってんだと理解していた。彼等の会見場での使命は政府に対して自衛隊撤退要求を出して見せ、できるだけ多くの市民の共感を得て、日本国民の中には自衛隊派遣を反対する人が多くいる、ということをイラクに向けて発信するための仕掛けになることだったんだと思う。
 ちょっと前の自衛隊派遣反対のときのネットワークが生きており、自衛隊撤退を求める署名やデモはとてもスムースに進んだ。それが自作自演などと憶測を生む結果にもなったが、とりあえずイラクに対して「ブッシュのアメリカ追従の政府とは異なる意見を持つ市民が日本には居り、人質となっている人々はその輪の中にいる」と言うメッセージを発信することができた。

 人質家族の行った記者会見は間違いなくイラクの武装勢力に向けたメッセージであり、メッセージ性の強い市民運動を組織するための呼びかけだったのである。

「人質家族の記者会見に違和感を感じた。人質の家族と言うより何かの主義者のプロパガンダのようだった」と言う述懐をあるネット掲示板で読んだが、当然だ。あの人質家族は「自分たち家族は政府の政策には賛成でない市民でそう言う市民はたくさんいる」というプロパガンダを行ったのだから。そうした活動の成果として「イラクの友」と認められた人質は生還したのだ。天晴れな情報戦の勝利である。

 人質に死者が出てしまったイタリアと比較して申し訳無いがイタリアは人質奪還を目指した情報戦に敗れている。長い硬直状態の後、武装勢力側から「イタリア政府に対しイラク政策を見直すようデモをせよ」という要求があり、デモをすること自体テロに屈するのではないかと言う議論を尽くした後、「平和」のみを訴えた静かなデモが行われる。

 人質を生還させると言うミッションの前では高遠妹氏の在り様はイタリアの静かなデモよりよっぽど正しい。彼女が見ていたのは日本の世論ではなくてひたすらアルジャジーラの電波の向こうの「サラヤ・アルムジャヒディン」だったのだ、と思うけどどうでしょう?

C.小泉君の情報戦
 これでアラブの民に共感した日本の市民により自衛隊撤兵の議論が強まるかと言うとそうはいかなかった。解放直後聖職者会議のおっさんに「今後もイラクで活動してください」といわれて高遠さんが「今後もイラクで活動したい」と答える。両方リップサービスのようなやり取りだ。お互いそれ以外になんといえば良いのだ。この状況を捕らえて、小泉首相、川口外務大臣が「不快感」や「やんわり批判」をしめす。これも日本政府側の情報戦なのだ。3人が英雄的に扱われ、自衛隊撤兵世論が盛り上がってはたまらない。

 世論は大きく揺り返し、自己責任論へと傾いていく。もちろんそれ以前からマグマは準備されていたと思う。解放される見通しが語られてからの長い1週間。あからさまな批判を避けていた「良識的な保守派」も自己責任論へと合流した。

 小泉君、あいかわらず世論操作上手です。

 しかしこの情報戦は日本の民主主義の未成熟をさらけ出したって点で国益にはかなってないよ>小泉君。
 でも君の目指すアメリカ追随の枠組みが壊れなかったからいいのかな?

D.一番強く届いたイラクからのメッセージ

 さて情報戦としてイラク人質事件を読み解いてみました。私が今回痛烈に受け取ったメッセージは「武器をもった自衛隊はイラクの人にとって米軍同様の占領軍以外の何者でもない」ってことかな。
 戦争の大義はもうとっくにどっか行っちゃった。「大量破壊兵器はなかった」「民主化を進めるといってアグレイブ収容所はフセインもびっくりな人権蹂躙の場になった。」

 今この瞬間も命を張ってる自衛隊が早く帰国出来るように市民は声を出すべきだのう。

 さて次回最終回、危険地帯におけるNGOの在り様を少し考えましょう。

 







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