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指輪物語関連ファイル

YUKI


2004年02月29日(日)
 <映画>『マスター&コマンダー』感想


公開初日、レイトで見てきました。9時30分開演。200席くらいの劇場が半分以上埋まっていました。客層はばらばら。若いカップルや年配のカップルや、女の子のグループや家族連れなどなど。いったい何を期待して見に来られたのか・・・予告編騒動のことを考えると少々心配ですが、初日から来るお客さんたちは映画を見るマナーがとても良くて、快適に過ごせました。感想は以下(ねたばれ全開)↓


映画全体として見れば、割とおだやかな描写が続いた印象があるんだけれど、冒頭とラストの戦闘場面が結構ショックかも。できるだけ忠実に描くとああなるんだねえ。砲弾か来て水兵たちがふっとぶさまや、白兵戦の血だらけの描写がすごかった。でも、これまで読んだ帆船ものの小説や漫画(私の場合、数は少ない)の舞台がこんなふうなんだ、と納得することができました。
細部がものすごく本物っぽくて、戦闘シーンもリアルな割には、穏やかな部分の人間ドラマの部分はどう受け取ればいいのかしら・・・と考えながら見ていました。船長の任務遂行に徹している姿を描いているのか、船医との友情を描いているのか。有無をいわせない戦闘シーンと人間的なシーンを融合させるのは難しいね。中盤の時間のゆっくりした感じは『刑事ジョンブック目撃者』と『ピクニックatハンギングロック』の監督と知って、なるほどと思いました。
私は主役のラッセル・クロウの映画を見るのはこれが四本目。『L.A.コンフィデンシャル』『グラディエーター』『ビューティフル・マインド』『M&C』
L.Aのクロウが一番好きだな。今回のは、グラディエーターとビューティフルマインドの主人公を足して割ったような感じだよね。(も少しやせた方が好きかも)ラッセル・クロウとポール・ベタニーのコンビは絶妙で、『ビューティフル・マインド』の時とは、全然違うパターンだけれど、ラッセル・クロウの反対側にベタニーを置きたくなる気持ちはすごくよくわかる。うれしそうに動物を追いかけるマチュリンかわいい。でもって自分で手術しちゃうのもすごい。そして熱血クロウに意見する得がたい友人。チェロとバイオリンでふたりで演奏するシーンも素敵。
問題の少年のエピソードは、抑えた描写でよかったと思う。「母さん」のかの字も言わない勇気のある子供たちでした。うがった見方をすればジャック・オーブリーの出発点と経過点と到達点を一本の映画の中で描いているんでしょうね。ジャックが皆に向かって檄を飛ばすシーンがいい。船乗り達を掌握して、思ったように動かすためには、いろいろな経験を積んで、はったりをきかせなけりゃいけないんだなあ。アメと鞭。尊敬されなかったら人はついてこない。
原作からどの部分をとって、どの部分を落として、この映画ができているのかはわからないのですが、映画としてみた時に、とても周到に構成されていて、エピソードの使い方も丁寧で穴のない映画だと思いました。
さてアカデミー賞の作品賞、監督賞は『王の帰還』とどちらがふさわしいでしょう・・・
正直なところ、『マスター&コマンダー』が大人が作った映画だとしたら『王の帰還』は少々子供っぽいかもしれない。PJという大きな子供が喜んで作った作品。それでも三本の映画の膨大な作業を仕切って、あの原作を映画として完結させたことは評価されるべきだし、難しいなあ。