TOP 最新の記事 戻る≪ INDEX ≫進む


指輪物語関連ファイル

YUKI


2002年07月07日(日)
 <ビデオ>『柔らかい殻』


こわくてきれいな映画。残酷で無邪気。現実と夢。
正反対のものを、何もない麦畑と空だけの村につめこんだ白昼夢。
『聖なる狂気』を撮った監督の映画だがこちらの方がおもしろい。

ここに出てくる登場人物はみな心に傷を持っている。
それは戦争だったり、過去の事件だったり、自分の性癖だったり。
主人公の少年の目からひとつひとつが明らかになっていく。
誰も彼もが傷つきやすく、自分の傷を抱えきれずに他者を傷つけ
何も救いはやってこないのだけれど、美しい風景と優しい音楽が
不思議な調和を生み出している。
解釈はいくらでもできるし、監督の原罪意識はかなり根深いように思うが
そういうものを気にしなければ楽しめる映画。

ヴィゴは軍務から帰ってきた少年の兄。
南の海の核実験で放射能を浴びたらしい。
髪が抜け、歯ぐきがら出血し、体重がだんだん減っていく。
いらいらと弟にやつあたりして、優しい兄とは言いがたいが、
物思いにふけった横顔がとても美しい。
弟は兄が大好きで、兄を奪っていく未亡人に嫉妬する。
そして悲劇が訪れる。

同じ年に作られた『悪魔のいけにえ3』で刃物を振り回していた人と
同じ人とは思えません。ヴィゴ。芸風が広いというか、節操がないというか、何と言うか。
この映画の頃、こわいような危ない目をしていたヴィゴが、年取ってちょっとユーモアを
感じさせるようになったことは、本当によかったなあ、と思うのでした。