今夜は月が大きくて、いつもの夜じゃないみたいだ。
サスケを抱っこして　あの金色の月を見せてあげようと思ったけど
動かさない方がいいよと言われてあきらめた。
サスケは身じろぎもしないで一点を見つめている。
頭を撫でても名前を呼んでもほぼ無反応。
サスケは　昨日の夜から今まで6回も発作が起きた。




先天性の脳の異常による癲癇（てんかん）発作。
今日の診察中にもサスケは発作を起こしたらしい。
手術が引き金になって　先天性の病気が出てくる事があると
以前　何かの本で読んだ覚えはあったんだけども
まさかウチの子が2000匹に5〜10匹の中の1匹に入ってたなんて。
これを書いてる今　7回目の発作が起きた。




ほぼ3時間〜4時間の間隔でやってくる発作の波。
このペースだと重積発作の可能性も考えられるとの先生のお話。
重積発作とは発作が継続して起る事で心肺機能が停止する事。
運良く命に別状が無くても大脳皮質の不可逆的ダメージによる失明、
意識鈍磨などの後遺症が残るかもしれないらしい。
もちろん　お薬の投与で　状況が改善される可能性は
十分にあるって事は　わかってはいるんだけれども。




発作が収まったサスケは　一心不乱に歩く。
居間とダイニングを同じ足取りで
わき目も振らずに何周も何周も歩き続ける。
歩く事で平常を取り戻そうとしてるかのように。
そうしてやっと心の平常を手に入れたら
またうずくまってじぃっと一点を見つめ続ける。
まるで自分の運命を甘受しているかのように。




例え目が見えなくなっても　今まで以上のおボケちゃんになっても
オマエはうちの子でいてくれればそれでいいから。
お外に遊びに行けなくなってしまったら
オマエの好きな所でぼーっとしてればいいよ。
今夜みたいな月の綺麗な夜は　黙ってお月見でもしようか。
オレ、オマエが間違い無く生きてればそれでいいや。

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