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PASSION
2004年06月06日(日)

「パッション」を見ました。

覚悟はしていたけれど…グロかったです。
物語は、イエス・キリストが
ゲッセマネの園で祈るシーンから始まります。
イエスは、この時自分が捕らえられて
殺されることを知っていたので、苦悶の中で
「どうかこの杯を取り除いて下さい。
 けれどわたしの願いではなく御心のままに」
と父なる神に祈ります。
やがて裏切り者の使徒ユダがやってきて
イエスを祭司たちに引き渡します。

血の涙を流して祈るイエスと
そばで眠りこけてしまう使徒たち
やってきたユダに向かってイエスが言う
「お前は接吻でわたしを裏切るのか?」
の言葉、使徒に耳を切られた兵士を癒すイエス
などなど、福音書に記されているとおりの出来事を
ひたすら淡々と堅実に描いているといった感じです。
出演者全員、英語ではなくアラム語とラテン語を
話しているところに描写へのこだわりが感じられます。

そして、イエスが捕らえられ
人々に罵倒され、鞭打ちに処せられるあたりからは
人々の残虐な仕打ちと、イエスの受けた痛みが
微に入り細に入り容赦なく映像化されてゆきます。

ムチ撲ちは、最初は細い棒で
背中を打っているのですが
そのうちにそれが棘付きのムチになり
撲つとその先は背中に突き刺さり
ムチを引くと同時に背中の皮は無惨に捲れます。
背中が終わると今度は胸も何回も何回も撲ち
やがてイエスの体は全身の皮が剥がれたように
真っ赤に染まってしまいます。
それでなくても彼は既に顔中を殴られて
別人のような顔になっており
そして、そんな彼を撲つ兵士たちは
まるでゲームか何かのように面白がっているのです。

この時点で、わたしはもう
どうしようもなくいたたまれない気分で
これから更に十字架の道行き、そして
クライマックスには磔があるのだと思うと
このまま見続けられるのだろうか
もう席を立って出て行こうかと考えました。
結局座ったままでしたが、それからはもう
映画鑑賞と言うよりは一種の苦行のような心境でした。

この映画で感動して泣く人はいるのでしょうか。
わたしは涙を流しましたが、それは感動と言うよりも
あまりにもむごくて悲惨なものを見た辛さからです。
この映画の作り手は、ある意味信仰の試練として
この映画を作っているのかもしれません。
とにかくなんだか自虐的なものを感じます。

「神はじつにそのひとり子を
 お与えになったほどに世を愛された」
というのは有名な聖句ですが
そこには「自分は赦されている」という
温かい癒しの響きがあります。

この映画で描かれる「パッション」
=キリストの受難にも、ある意味
この聖句について描かれている
と思うのですが、そこで表現される
「神がそのひとり子をお与えになる」様子は
壮絶な苦難と痛みです。
けれど、そんな艱難辛苦の果てに
自分を殺す者ために祈るキリストの姿を見て
感じるのは、神の愛や癒しではありません。
感じるのは、近しい人の拷問と処刑を
目の前で見せられるような辛さと
自分がキリストを処刑し、または見殺しにした
罪を問われているような恐ろしさなのです。

映画では、イエスが息を引き取ると
聖書のとおり神殿の垂れ幕は裂け
その後復活したイエスの横顔が映り映画の幕は閉じます。
けれどもこの映画にカタルシスは感じませんでした。
キリストの受難なくとして救い無しなのだろうけれど
この映画については受難あれども救い無しといった印象です。

作り手はこの映画から
なにを感じ取って欲しかったんだろう
確かに古代の人たちは
あんな風に残虐な拷問の仕方をしたのかもしれないし
今だって別な方法でもっと惨いことが行われているようだし
人間はいつの時代でも信じられないぐらい残忍に
非人道的になれる生き物なのかもしれない。
この映画もひとつの描き方として間違っているとは思いません。
けれど、わたしはそういうものを見ることで
神様を信じる方向に気持ちがゆき難いですし
見せようとする心理にも理解しがたいものがあります。

アメリカでは大ヒットしたというけれど
具体的にどの辺りがそんなに支持されたんだろう…。
日本の風土にはあわなさそうな映画ですよね。
ちなみに、わたしはクリスチャンでは
ないのだけど、小・中校と教会学校に行き
高校も大学もキリスト教系だったのですが
でもわたしの中に根付いているキリスト教と
この映画の作り手のキリスト教とは
しっくり来なかったのかな…。

「社交の場では宗教と政治の話はするな」
と言われるように、宗教と政治は
古今東西、あらゆる戦争の元になっています。
たとえ同じ宗教を信じていても
まったく同じ神様を共有しているとは
言えないのかもしれない。
神様について、意見を言うのは
自分自身の心の中の神様と対話するのが
一番なのかもしれません。



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