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不滅の棘
2003年03月22日(土)

わたしったら、
ご贔屓さんの退団公演中に
それもあと10日足らずで千秋楽って大事な時に
ドラマシティなんて、
しかも花組のドラマシティなんて
観に行っちゃっていいんですかねぇ。

…と、自分につっこみを入れつつ
足を運んだ「不滅の棘」―――――
スカステで作品紹介を見てたら
これがまたわたし好みの
ドラマティックな悲恋物らしい
ということで、どうしても
観たくなってしまったんですよ。

観て良かったと思います。
作品や出演者がよかった
ということだけじゃなく
個人的にすごくカタルシスを感じました。
これは「カナリア」に続く
宝塚・花組のパラレル・ストーリー
つまりシンクロする物語
ではないかと。

こういう所には書きにくいんだけど
わたしのご贔屓さんとの
利害関係…とでもいいますか…
そういうのが
どこかで尾を引いてて
今の花組って、どうしても
素直な気持ちでは
観られない部分があるのですよ。
そんな気持ちを持って
この舞台を観たら
カタルシスを感じたんです。


  「不滅の棘」の主人公エリィ(春野)は
 16世紀"不死の薬"を開発した父の実験台になり
 図らずも不滅の命を持つことになってしまう。
 それから300年生き続けるエリィ。
 人間の誰もが、欲しがる永遠の命を
 簡単に手にしてしまったエリィ。
 でも彼は叫ぶ。
 「――――僕に命を返して!」
 不死の命を持ってしまった彼は
 もはや人間を超えた存在になってしまったのだ。

 歌の才能があった彼はそれを生かし
 ある時代には宮廷お抱えの歌い手として
 またある時代にはジプシーとして、
 そしてまた最後の時代には
 世界をまたにかけるシンガーとして
 人々の注目を集める。
 でも彼は歌う。
 「望もうと望むまいと スターと呼ばれる
 どうぞ リラックスして お気を遣わず…
 望もうと望むまいと 人々の興味を惹く」

 銃で胸を撃ち抜いても
 死ねない彼だったが
 その一方で、不死の薬の効き目が
 300年を経た今消えてきたのを恐れ、
 その処方箋が書かれた紙を
 必死で探してもいた。

 彼は望んで不死になった訳じゃない。
 彼は、永遠の若さと美貌を手に入れた。
 そしてそれを思う存分享受しているが溺れてはいない。
 なぜなら、彼は不死になった者にしか分からない
 孤独と苦しみを知っているから。
 彼は不死の身を呪っている。
 でも死にたくはない。

 そして彼はとうとう
 処方箋を、愛した女性の子孫に託し
 それを処分させたことに満足し
 塵となってこの世から
 消えることを選んだのだった。

―――――と、これがエリィの
物語なんですが
それがわたしの中で
うま〜く現実と重なって
エリィがおさちゃんそのもののように
思えて来たんですよ。
ちょうど「カナリア」のヴィムが
チャーリーそのもののように見えたように。

だから、言い訳する訳じゃないけど
今の時期に観られてよかったと思うよ。
よくできた話だな〜と思いました。
わたしのように感じた人はほかにいないかな…。
どちらも充実した舞台を見せてくれる、
結局それが一番納得できることなんですよね。

その他印象に残ったのは
ユミコちゃん(彩吹)&あすかちゃん(遠野)兄妹です。
2人ともうまいっっ!!!

2人は、1930年代に判決を迎える
とある事件の被告側の家族として
物語に関わってきます。
被告である2人の母親・タチアナ(梨花)は
強欲で冷酷な女性で、そのために
兄ハンス(ユミコちゃん)は
飲んだくれた不良少年に育ってしまいます。

妹のクリスティーナ(あすかちゃん)は
「兄はお母さんの愛が欲しいだけ」
と分かってはいるのだけれども
2人の間を修復することも
母や兄の乱れたくらしを
止めることもできずにいます。

それでもまだ
救われる希望はあったんですが
クリスティーナの恋の相手が
エリィ(春野)だったことから
事態は深刻な展開を見せ始めます。


 エリィは、クリスティーナの家に伝わる
 「不老不死の処方箋」が欲しいばかりに
 彼女の望むまま結婚の約束をする。
 クリスティーナは、エリィが自分を
 愛してはいないことを感じていたが
 自分の愛で彼を変えることが出来る
 と純粋に信じてたのだった。
 ところが、一部始終を知った母親が
 割って入り、娘を厳しくなじって追い払った後
 「わたしなら、結婚まで求めたりはしない」
 と、エリィを誘惑。
 「処方箋さえ手に入れば
  母子どちらでもかまわない」
 と思っていたエリィは
 タチアナとの取引に合意し
 2人は夜の闇に消えてゆくのだった…。
 そして、クリスティーナは絶望のあまり
 カレル橋の上から身を投げ自殺した。

ここの嘆きのクリスティーナの歌は
ぞくぞくするほどドラマティックです。
絶望するクリスティーナのすぐ脇の道端では
兄のハンスが飲んだくれて
母親の名前を空しくつぶやいている
という演出も効果的です。

 翌朝、エリィのホテルで
 タチアナは娘の自殺を知る。
 クリスティーナは遺書を残していた。
 "お母さん 私分かったわ。
  これこそ人生
  あの方と いつまでも幸せに"
 激情に駆られたハンスが
 母親に掴みかかりながら叫びます。
 「この遺書を読んだか?!読んだか?!」
 言葉も出ないほど激しく揺さぶられながら
 タチアナは悲鳴のように叫ぶ。
 「…読んだわ…読んだわよ!!」
 「嘘だ!この遺書を読んだら心臓が止まるはずだ。
  ここには…あんたの幸せ、って書いてある。
  これを読んだら生きてはいられないはずだ!
  これを読め!読んで死ねぇ〜〜っっ!!」

すごい台詞だと思うけど
それを叫んでるユミコちゃんもすごかった。
その修羅場を、他人事のように見ながら
ウイスキーを飲んでいる
エリィおさちゃんの様子も含めて
このシーンは、怖ろしいシーンでした。

ユミコちゃん、こういう繊細な役を
やらせたら天下一品ですね。
それにまた、あすかちゃんがここまで
純粋無垢な少女を演じきれるとは思いませんでした。
「琥珀」のイメージだと、なんかこう
もっと自我の強い人になるような
気がしていたんですが。

脚本的には
エリィの子供を産んだフリーダ(ふづき)が
どれほどエリィを愛していたのかが
説明不足で、わかりにくかったと思います。
「フリーダはエリィを愛していたからこそ
姿を消したのだ」
ということが納得できて初めて
フリーダの不滅の愛が浮かび上がり
エリィは、自分の命が消えてもいい
と思える訳だから
そこにもっと強い衝撃がないと…。

恋を拒絶するエリィを
さんざん口説き落として結婚したのに
エリィが不死だと分かると
突然彼を拒否し
生まれた子供を連れて失踪。
という事実だけが語られると
なんだかフリーダが
訳の分からない人に思えてきます…。

演出は、衣装・装置がすべて白で
不老不死の処方箋と、エリィの血だけが赤い
というのがすごく効果的でした。
人生は薔薇色、という言葉があるように。
喜びを感じたとき、人生はより色を帯びて見えます。
でも死なないエリィの人生には色がなかった。
彼の時は止まり凍り付いていたから
つまり彼は、人生を生きることそのものが
できなかったのかもしれません。

というわけで、ここに書いた人以外にも
健闘している人はいたと思いますが
特筆するのはそんなところでした。



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