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 ボーイ・スティル・ミッシング(B+)/ジョン・サールズ

<内容紹介>
愛する人が消えたその日、ぼくはすべてを失った。

1970年代、アメリカ。帰らぬ父を捜して、ドミニクは街をさまよった。そこで逢った父親の愛人イーディーに、彼は瞬時に恋をしてしまった。たとえ彼女が父の子を身ごもっているとわかっていても…

イーディーには金が必要だった。彼女を信じ、ドミニクは母親の金を盗み、彼女のもとへと届けた。「お腹の子にはあなたの名前をつけるわ」二人は危険で狂おしい関係にあったはずだった。

だがある日、イーディーは突然彼の前から姿を消す。そして同じ日、ドミニクの母親が不審な点の多い死体で発見された。すべてを失ったドミニクはこう誓った。自分を汚したこの世界に復讐をすると…。(カバーより)


父親と母親の間で揺れる少年の心という設定は、同じくBOOK PLUSシリーズにあるブラッド・バークレイの『僕の夢、パパの愛』に似ていなくもないが、こちらはさらに過激な要素が盛り込まれていて、純粋にミステリーとは言えないが、それに近い驚きとドキドキ感がある。

ゆえに、あらすじを詳細に書くのはためらわれるのだが、カバーに書いてある内容から判断して、ベルンハルト・シュリンクの『朗読者』のような、少年と大人の女性の関係を思い浮かべると、全く思惑は外れる。『朗読者』の主人公よりも、もっと純粋で素直だ。

主人公のドミニクは純粋ではあるが、最後に自分を犠牲にしても、復讐を遂げたいという強さも持ち合わせている。自分を捨てたイーディーに対する気持ちは、自分勝手な『朗読者』のそれとは全然違うし、両親を思いやる気持ちや、母の死に対する責任など、むしろ自分自身に対する葛藤が描かれていて、そこに彼が大人になっていく過程を見ることができる。

しかし、イーディーは本当にドミニクを捨てたのか?それは最後になっても不明のままだ。そして、異父兄トルーマンの存在とは何だったのか?それもよくわからない。とはいえ、「サリンジャーの再来と絶賛!」という言葉とはうらはらに、テンポもよく面白かった(個人的にサリンジャーは嫌いなので)。サリンジャーよりも全然いい!


2003年02月11日(火)
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