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 心地よく秘密めいたところ/ピーター・S・ビーグル

「ぼくは死んでるんです」「分かってますよ」小柄な男はやさしく言った。墓の下の自分の身体にさよならを告げ、彷徨っていたマイケルが出会った生者。ここはニューヨークの巨大な共同墓地。男は言う。死者はしばらくの間とても孤独で怯えていて、話相手を求めてます。わたしはお手伝いをしてあげたいんです。チェスをしたり本を読んであげたり。ほんの束の間ですけどね。やがて彼らは、何もかも忘れてどこかへ漂って行ってしまうから・・・そうやって男は、19年間墓地で暮らしてきたという。生と死の間をほろ苦く描いた都会派ファンタジーの名作。(扉より)


ディケンズやモームの文庫と一緒に買って、そのまま手を付けずにいた本。幽霊ものなので、10月のハロウィーン月間を機に、読んでみた。タイトルだけは以前から知っていたが、内容はまるで未知。しかし個人的には、ディケンズやモームといった正統派の文豪と一緒に買ったのが、そもそもの間違いであったと気づいた。

作者は19歳で、おそらく彼の感性は素晴らしいものなのだろうし、19歳でこの話を書いたということは驚きに値する。だが、やはり19歳でしかないのだ。ディケンズやモームと比較するのは、はなはだ可哀想ではあるが、こういった文学の巨匠たちと比べると、やはり薄っぺらな感じがする。物語の起承転結や、それぞれの登場人物が出会う必然性といったものが、何も感じられなかった。

そもそもジャンルが違うだろうとは思うが、書く力、読者を引き寄せる力というものは、どんなジャンルの作家でも共通であると思う。良く言えば詩的と言えなくもないが、個人的に詩的な描写には退屈してしまうので、これはもう、いいとか悪いとかではなく好き嫌いの世界で、私は嫌いだとしか言いようがない。

しかし19歳の少年が、なぜ、こんな物語を書こうと思ったのか。答えは次のようなことだった。

「作家に、昔の作品のことを尋ねるのは、残酷なことだと思わないかい?」

ビーグル自身も、未熟であったと感じているに違いない。



2002年10月12日(土)
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