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 悪童日記/アゴタ・クリストフ

以前から気になっていた作品だが、ブコウスキーあたりとイメージがごちゃまぜになっていて、手が出なかった本である。しかしハヤカワのepi文庫に入ったことにより、読んでみようかと決心がつく。

まず言わなければならないことは、ブコウスキーあたりのイメージ(これもあんまり定かではないのだが、なんとなく・・・)を読み始めて即座に取り消さなければならなかったことである。今やこのイメージは、忘却の彼方である。

この本は、あまりにも有名になっていて、私がどうこう感想を書くまでもないのだが、私なりの正直な感想を言うと、「すごい!」という一言だ。それにこの悪童たちの正直な生きざまはどうだろう!子どもたちのすごさに圧倒された。

戦争という特殊な状況のもとで、あたりまえの常識が通用しない世界にあり、自分たちのアイデンティティーを貫き通すたくましさは、驚きでもあり、うらやましくもあった。だが、彼らの基本にある特別な正義感は、ときにキラリと輝きを放つ。していることが異常でも、精神には純粋なものがある。子どもたちの生活を通して、当時の社会状況が手にとるようにわかる。けして尋常でない状況にあり、彼らは自分たちの信念に絶対的な自信を持っている。それはなぜだろう?

この社会にあって、周りに気を使って生きることは必然とも思えるし、また実際に自分のこと以外で疲れ果ててしまう場合も多いだろう。そもそも「気を使う」ということは不自然である。心からの行動であれば、「気を使う」こともなく、自然に行動できるはずだ。しかし人々はみな、自分を押し殺して、社会を丸く収めるために、気を使わざるを得ないといった状況。だから疲れるのだ。自分の基準に合わせるのではなく、他人の基準に合わせているからだ。これが社会においては生きていく技なのかもしれないが、精神的にはけしていい状態ではないはず。

だが、ここに出てくる子供たちは、絶対的な「個」がある。人に何かをするときも、自分たちがしたいと思うからするのであり、自分たちの基準に合わないことは絶対にしない。それが一般の社会で通用するかどうかはともあれ、このことは、全編を通じてうらやましい生き方であると思えた。

感情を一切排した文章には、余計な部分がまるでない。犯罪も性も暴力も、淡々と同じ調子で書かれているのみだ。それがかえって生々しく、読む側に衝撃を与えるのではないだろうか。この作品は、さらに2作を含めた三部作となっている。もちろん全部読むつもりである。


2001年06月04日(月)
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