へそおもい

2013年04月09日(火) 奄美大島の旅7(忘れそうになりながらもがんばって書きなぐる)

ウェットスーツをきる。


ウェットスーツって
なんだか
全身黒タイツの顔だけ
ぬいだやつみたいで

着ると
おかしな動きを
したくなる衝動が
わく服だ。


水中眼鏡とか
空気をすうやつとか
装着方法をおそわって

いざ海へ。


さっき
水面をつるつると
すべった
海の中へ。



わたしは
うみがこわい。

おおきすぎて
のみこまれそうで
こわい。


そもそも
水がこわくて


小学校3年生まで
もぐることが
できなかった。


クラスのみんなが
簡単に泳いでいる横で


水に顔をつけられず
水のなかに棒立ちにつったって
水面をじっとながめて
固まっていた自分を
おぼえている。


小学校3年のときの
夏休み水泳教室の
めだか組の先生だった
大学生のおねえさんに
指導されて

やっと
およぐことが
できるようになった。


それでも
まだ
あの
水のこわさが
身体のどこかに
のこっている。


だから
これまで

うみに
近づけなかった。



ひろみさんが
陸で火の番をしていて

天野さんが
海の中を
ガイドしてくれる。


身体のつかいかたを
おそわって
ぷっかりうかんで
海の中をのぞく。


海の中

水面の上と下では
別の世界。


のぞいてみると
こわさよりも
好奇心がさきにたつ。


魚がいる。
珊瑚がはえている。
みたことない形や色の
いきものたち。


うえからは
みえなかった

わたしが
知らなかった
世界がある。


すこしずつ
深いところへ。


大丈夫そう。
すこしこわいけど
こわいより
おもしろい。


岩には
いろんな色の
イソギンチャクの
なかまたち


繁華街みたいに派手な
色合い。

へんてこな動き

みえかくれする
いろとりどりのお魚たち。


ずっと
みてたい。


ゆっくりゆっくりと
深いほうへおよぎゆく。

知らなかった。


わたし
38年間いきてきて
うみって
こんなものって
しらなかった。


深くなると
雰囲気がかわる。


宇宙旅行のよう。


地球の海の中に
宇宙が
かくされていたんだ

これが
地球が
宇宙の一部だ
ってことの
証拠だ。



耳に
ぷちぷちと
何重にもぶあつい音が
きこえてくる。


「この音なんですか?」


「これは
イキモノたちのたてる音。
水の中は音が伝わりやすいんだよ」


すごい
たくさんの
イキモノの気配。


水は透明だけど
よくみると
白いつぶつぶが
たくさん
とけている。


春だから
プランクトンが
たくさん
水中にいるんだそう。


水の中に
命がひしめきあっている。


これまで
「母なる海」という言葉を
きいたことはあるけれど


ほんとうに
海は母だったのだと
やっと
身体で感じることが
できた。


しらなくて
ごめんなさいって
おもった。



人間は
自分の体験したことのあることだけを
基準に世界をみているけれど

自分がみたことのない
すばらしい世界は
たくさんあって

地球は
わたしがおもうよりも
ずっとずっと
すごくって

宇宙も
わたしが感知できない
壮大なシステムの中で
動いていて


もう
ほんとに
しらないのに
いろいろ
おもったり
いったりして
ごめんなさい

って
おもって

涙が
でてきた。



人間って
なんて
ちいさいんだろう

自分の
目と耳と感覚で
うけとれるもの
しか

感じられない。


わたしが
感知できる以上の
わたしがしらない

すばらしい世界が
あるんだと

それを
信じきっても
大丈夫だと

安心する気持ちになった。



わたしがしらないところで
こんなに
生命力あふれ
いきいきと
世界を
うごかしてくれていて

ありがとう
って

意識できなくて
ごめんなさい

って
おもった。




天野さんが
水の中で
おもしろいものを
みつけたら

指差して
教えてくれる。


珍しい形の珊瑚
なんとかなんとか(傘?)という
カラフルなへんな動きの
イソギンチャク
すごく大きな青いヒトデ

「青ヒトデ」

「こんなにみたそのままの名前の
 いきものいないですよ」笑


目の前に
ぷわーっと
さんご礁の町。


おおきな魚
小さな魚

水玉模様
しましま
くねくね
にょろにょろ

青赤黄色
どピンク紫…

なめらかな動き
とっぴょうしもない動き

その中に
はいりこんで

自分がその仲間の
一部になったような
気持ち。



ひょうきんな顔の
おさかなと目があって
あいさつする。

みんな
ひょうひょうとしてる。


はじめて知った
海の中の世界。


まやさんは
水がすきみたい。


どんどん
水のイキモノに
なってゆくように
みえる。


このまま
水の中にいると
まやさんは
お魚に
なってしまうんじゃないかと
おもう。



水が冷たくて
手がしびれてくる。

もっと
水の中にいたいけど
身体はつめたいみたい。


「もう1時間
 そろそろ陸にむかいましょうか」


後ろ髪ひかれながら
ひろみさんが守っている
火のほうへ
およぎゆく。



うみから
すべては
生まれたんだ。

そうして
わたしたちは
うみに
かえってゆくのかもしれない。


うみの中の世界

わたしにとって
魂の世界を
おもわせた。



海をとおして
魂の世界を
感じられるし
確認できるし

そうして
わたしたちは
深いところで
安心できるような
気がする。


海が好きという人の
気持ちが
やっとわかった。




海派か山派か?
きかれたら


これまでは
断然山派って
いっていたけど

これからは
海山派って言おう。



陸にあがって
岩陰で
すばやく
ウエットスーツをぬいで
着替える。


乾いた服のきもちよさ。


焚き火のあたたかさ。


ひろみさんに
あたたかい
レモングラスティーを
いれていただく。

おふたりの
おうちのお庭で
とれたという
レモングラス。


全身を
あたたかく
つつんでくれる
ぶあつい緑の香り。

しあわせ。



なんて
自分が
生きている感じがする
時間。


天野さんご夫妻の
やっているお仕事の
すばらしさを
おもう。


海の世界と
人間を
つなげなおす
お仕事の
よう。


うみにたいする敬意
宇宙、地球、
大自然に対する
敬意。


そのもとで
人間らしく
いきるには
どうしたらいいのか。


わたしは
イキモノとして
ちゃんと
生きたい。


もう
いろいろな
気持ちがひそかに
あふれ

感動に
うちふるえつつ

焚き火にあたり

レモングラスティーを
味わい


それから
片づけをして
荷物をカヤックにのせる。






もうすぐ
夕方の
時間だ。



帰りは
シーカヤックで

もときた海を帰る。


カヤックにも
やっとなれてきた。


体育会系の
漕ぎ方をして
つるつるした海面をすべってみる。


わたしは
この水の下に

宇宙がひろかっていることを
きょう知ったんだ



うれしい
気持ちになる。



ひろみさんも
天野さんも

つるつると
すべるように
自由自在。


ああ
海からはなれたくない。


「まやさん
 このまま逃げようか!」

「逃げよう!」



でも
きっと
わたしたちじゃ

逃げようとしても


おふたりに
すぐ
つかまってしまうだろう。



陸に
あがるのが
寂しいながらも

シーカヤック着き場に到着。


みんなで
よいしょよいしょと
カヤックを
車のよこまではこぶ。


大切な
時間だった。


まだまだまだ
わたしは
死ぬまで
しらないことが
いっぱい。


きっと
死んでからも
しらないことが
いっぱい。


車で
宿の5マイルまで
おくってもらう。


あしたは

ハワイや
加計呂麻の
スライドをみせていただきに

おふたりのご自宅に
おじゃますることになった。

それから
おふたりがもう一軒かりている
秘密基地をみせてもらうことに。


「お昼ごちそうしますよ」

「えーでも…いいんですか」

「じゃあ、かわりに草むしりしてもらおうか!」

「わあ!やります!よろこんで!」


うれしい展開に
わくわくする。



宿に帰ると
夕方のにおい。


5マイルのむすめさんたちや
宿泊している子、

子どもたちが
みんながお庭で
あそんでいる。


のどかな
春の夕方。



おふろに入って
ひといきついて

7時から
晩ごはんだ。




晩御飯

テーブルには
お頭つきの赤いお魚のおさしみ。

すじあらとかはあじんとか言う
お魚らしい。

うまい!

今夜は
まやさんも飲むらしい。

30度の
黒糖焼酎竜宮を
ふたりで
がぶがぶ
のむ。


煮物がでてくる。


おあげ、
じゃが、
煮たまご
上にはしまらっきょう。


ますす?(かわはぎ)のフライは
レモンをかけるとうまい。


そうして
昼間

郵便配達のおばちゃんが
ひろっていたという
おいしい貝

トゥビンニャ(トゥラダ)。



トゥビンニャ(猛毒のアンボイナ貝とカタチが似ているんですって)


かわいい
むすめさんたちが
ひろったのだという。


「おいしい!」



となりでご飯をたべていた

5マイルの
娘さんたちが

うれしはずかしの
表情をする。


なんとかわいい
子どもたち。

すこしずつ
なれてきて

ふざけて
一緒に
あそぶ。


こんなうみと緑の中で
育つなんて

なんてしあわせな
子どもたち
なんだろう。


わたしも
もしも
子育てをするなら
島で
したいな。



子どもたちのおかあさんである
りえさんと
新潟からきている
そのまたおかあさんも


なんとなく
一緒に
おはなしして
すごす。


りえさんと
なにか
ユタ神様の話になる。

「もしかして
 会ったのって○○さん?」

わたしたちが
あった
男性のユタ神様の名前を
いう。


「そう!」

「いま、本を読んでて…」


驚くことに
いま
彼女が港で借りて
読んでいる本に
(港に本貸し出しコーナーがある)

その方がのっていたという。


本をもってきてみせてくれる。

そうそう
この人が
わたしたちが
数日前にお会いした方!


その本のタイトルは
「ユタの黄金言葉」
(大阪に戻ってからさっそく購入)


沖縄や奄美のシャーマンについての
レポートがまとめられている本。

すごい
タイミングだ。


いろいろなことが
おもしろいくらいに
つながってゆく。



10時すぎ

りえさんとおかあさんと
子どもたちは
ご近所の
お誕生日会ということで

てづくりのケーキを
飾りつけていた。


ケーキのまわりに
カラフルなお花

とっても
すてき!


そのケーキを
これから
ご近所さんに
もっていくのだそうだ。



「勝手にのんでてください」


りえさんが
竜宮の瓶を
おいていってくれる。



みんなが
でかけたあと

コップに
竜宮をいれて


うみへゆく。


波打ち際に
いすを
ふたつならべて


まやさんと
ゆるゆる
語る。


きょうも
まあるい月が
みてる。


黒糖焼酎のみながら
ゆるゆる
はなして

夜が
ふけてから


部屋にもどって
ウクレレを
ひく。


てきとうなうたを
まやさんと
うたっているうちに
まやさんは
ねはじめる。


ウクレレ
ひくのやめると

まやさんが
おきて

「ちょっと
 きもちいいから
 そのまま
 ひいてて…」


といって
またねる。




しばらく
ウクレレをひいて


まやさんが
ぐっすり
ねむったころ


またうみへ
あいさつに。


はだしになって
うみに
つかる。



今夜が
加計呂麻の
最後の夜。

それをおもうと

もう
うみから
はなれたくないと
おもう。


でも
おふとんは
お部屋


お部屋にもどって
おとなしく
ねむることにした。


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はたさとみ [MAIL]

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