同じ月を

 今年のウィンブルドン男子シングルスの決勝を、ワタシはかつて経験したことのないほどの興奮を覚えて観た。
 二ヶ月も前のことなのに、思い出してもまだ血沸き肉躍る。
 ウィンブルドンの二週間のためだけに開かれる、工事中で屋根のないセンターコートに立つ稀代の選手ふたり。一生忘れない。
 いちポイントたりとも目が離せなかった。歴史がつくられていく時間を(テレビ越しながら)目の当たりにしていると思った。

 今週、ロジャー・フェデラーはシュテフィ・グラフが持っていたテニス世界ランキング一位の連続保持記録の187週を、超えた。
 今年に入ってジミー・コナーズの持っていた男子の記録はすでに塗り替えている。今後も大いに伸ばし続けるだろう。
 世界で最も偉大なスポーツ選手のひとりだ…。




 そんでもって、そのウィンブルドン決勝のビデオを見ながら時にニヤニヤ、時にメソメソしながら酒を飲む。
 フム、アモバンの苦味は、慣れればスランジュ(酒のつま)になり得るな、合わないこともない、などと思いながら。

 漂う。浮遊する脳みそ。熱。その快さ。
 前後どころか右左も上下すらわからない酩酊。
 漂ううちに、いろいろなことを思い出したりもする。
 いろいろなことを、実によく覚えているものだ。
 ワタシは概ね愛され、恵まれて育ったと思う。
 欲張れ、とよく言われた。
 欲張って、いいのかなァ。


 自分が「自分以外」にフォーカスし続ける限り、自分のかたちだけが見えない。
 でも、ま、月、見えるよね、そこから。
 明日28日は皆既月蝕だそうですよ。
 ね、同じ月を見ようよ。
2007年08月27日(月)

メイテイノテイ / チドリアシ

My追加 エンピツユニオン
本棚