空色の明日
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愛用しているヘンケルの文具用はさみが 少しさびてきたので、おもむろに砥石を出す。 普段職場で刃物やヤスリを毎日売っているくせに 自分の所有する刃物はずいぶんと手入れを怠っている。 せっかく砥石を出したのだからと 包丁やらぺティナイフやら片っ端から研ぐ。
私の包丁は結婚するときに父が持たせてくれたもので 刃物で有名な三木市で名前まで入れて 調達してきてくれたもの。 今となってはこれが一番の形見になってしまった。
この前、父の持ち物を整理していたら はさみが二つ出てきた。 ひとつは私が社会人になってはじめてのお給料で 父にプレゼントしたヘンケルの剪定ばさみ。 もうひとつは、母が父にはじめてプレゼントした 糸きりはさみサイズの小さな鶴の形をした これもまたヘンケルのはさみ。 親子でなぜか同じ人へのプレゼントはヘンケルのはさみ なんておかしいねといいながらそれぞれに 送り主の元へ帰っていった。
刃物は一生もの。 研いで大切に扱えば本当に一生助けてくれる。 刃物を送るのは縁起が悪いとも言うけれど いつかは別れる親子ならばそれもよかろうと お互いに送りあったもの。
私がお客さんに売っているはさみは ドイツ製で刃や部品が全部交換できるようになっていて 1丁買うとこれもまた一生もの。 私が昨日売ったはさみが誰かのところで 一生大切に愛されればいいのに。
モノは買い替えればいいように 安価で短命に作られるこのごろ。 いつかは形見になると思えば こんなふうに大事に使えるものを送ることって とても意義のあることなのにな。
安藤みかげ
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