空色の明日
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2002年03月04日(月) いちょう並木のセレナーデ

半年前、初めてライサーってやつを買った。
ライサーっていうのはお米を入れておいて、スイッチを押すと
必要な量だけ出てくるあれだ。
ライサーなんて、なんか家庭の匂いがしてイヤだなって、
カッコイイのに出会うまで買わないと決めていたら
とてもカッコイイステンレスのを見つけた時、ちょっと高かったけど
思いきって即買いした。
小さくてスマートで流し台の下にも入れられる素敵なやつ。

今日いつものようにスイッチを押したら、少しだけ残ってたお米が
パラパラと出てきたので、倉庫から大きな米袋を出してきて袋を開けて
こぼさないようにステンレスの小さなボウルで少しづつすくって
ライサーの中に流していった。

のんびりした午後で、時間に余裕があって、新譜じゃないけど
この前買ったばかりのCDを初めて流していたし、気持ちに余裕も
あったのでそんな悠長なやりかたで新しいお米をライサーに移していた。

注意深く注意深くやったつもりだったのに、やっぱり途中でバラバラと
床にお米をこぼしてしまって、
「農家のみなさんごめんなさい」
と心でつぶやきながら、床にしゃがみこんで一粒一粒拾い集めていた時だった。
初めて聴いたそのアルバムからタイトルも知らないのに聞き覚えのある曲が流れてきた。

とても優しい人が歌っていたお別れの歌だ。

なんてこった。
床にはりついてお米を拾ってる時にこんな曲が流れるなんて。
なんだか映画みたいにドラマみたいに外は夕暮れで、
そしたらなんだか急に目の前が曇った。
映画みたいにドラマみたいに、なんだか情けないような、
笑っちゃうようなそのタイミング。

素直に泣けることは幸せな証拠だ。
堪えなきゃならない涙じゃないって幸せだ。
そう思って涙が流れるままに泣いてみた。ポロポロ泣いてみた。
泣いたけど心の中はとってもとっても温かで、なんだかすごく優しい気持ちで、
泣きながらお米を砥いで炊飯器のスイッチを押して、
ご飯が炊ける匂いがする頃には鼻の頭は真っ赤で
そんなままで美味しい卵焼きを焼いて、具の一杯入ったお味噌汁を作って食べた。
幸せなご飯の匂い。

悲しくないわけじゃないけど、楽しい思い出しか残さなかった人。
そんな人の置き手紙みたいな歌を聞きながら・・・。

全てが優しさに包まれたようなそんな夕方だった。


安藤みかげ