紫
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車やバイクで旅に出ると、田舎道に「無人農家」があります。
取れたて野菜をリヤカーにのせ、100円ほどで売ってくれています。
もちろん無人なので、お金を払ったかどうかの確認なんてできません。
空き缶にちゃりん、と入れるだけです。
その無人農家。
実は、私の家の近所にも、あるのです。
しかも3つも!
そのうちのひとつは、私の家の窓からよく見えます。
ときどき、スーパーの白い袋がリヤカーに結び付けられています。
それは、私の母に「いい野菜が置いてあるよ」という合図です。
いつしか、リヤカーのおじいさんは、私の母にだけそんな合図をくれるようになりました。
合図がある日は、母はとくに欲しいと思っていなくても、野菜を買いに行きます。
だって、おじいさんが「これはうまい!」と教えてくれている野菜。
買わずにはいられません。
そして、母はおじいさんの野菜をことこと、ことことと煮物にしてお返しします。
いつも、おいしい、おいしい、と喜んでいてくれたとのこと。
そんなふうに毎日を過ごして約5年。
リヤカーのおじいさんは、母が柿が好きだということを知っていたのでしょう。
「おいしい柿が今年もなってるで。お金、いらんから、また届けるわ」
おじいさんがつい1週間ほど前に母に言ってくれたそうです。
おじいさんの柿、毎年、母は楽しみにしていました。
それが……。
「リヤカーのおじいさん、きょう、お葬式だったみたい……」
いきなりすぎる死に明らかに落胆している母。
「柿、楽しみにしていたのになぁ……」
いかにも「柿」だけを楽しみにしていたような発言を繰り返す母ですが、あした、母が元気でありますように。
おやすみ。
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