紫
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十数年前の4月1日。
大学の入学式でした。
友と母に見送られ、前日の寝台列車に乗り、東京に着いたのが4月1日の朝6時くらい。
本当は、ひとりで東京に向かうはずだったのですが、出発当日、父がきゅうきょ着いてきてくれることになりました。
東京駅を降りると、雪が降っていました。
こんなに寒いところとは想像さえしていなかった私は、春の装いしか持ってきていません。
それでも、予備に持ってきていたジャケットに着替え、ぶるぶると震えながら入学式に向かったのを覚えています。
入学式に着いてこなかった父は、私の住む部屋の改良に取り掛かっていました。
洋服ダンスを買わなくてもいいように、長押(なげし)に木でハンガーかけを作ってくれたり、開かなかった窓を直してくれたり、近所の電気屋さんで電気ストーブを買ってきてくれていたり。
そんな父の行動は露知らず、「東京に住む」ということにかなり緊張しながら、入学式の1日を終えました。
見慣れぬ町、聞きなれぬ言葉のなか、ひとり残してきた祖母のことを思い、親戚の大反対を受けながら上京を決意したことを思い出し、これから本当にひとりで生きていけるのか、大きな不安に襲われながら、これから住む部屋に戻りました。
電気のついた部屋に入ると、父がせいいっぱい部屋を暖かくして、待っていてくれました。
それでも11度までしか上がらない部屋だったけれど、心がほんのりとせつなくあたたかく感じたことを覚えています。
翌日、父は帰っていきました。
それまで感じたことがなかった「ホントの寂しさ」という感情を、生まれて初めて認めた瞬間でした。
そんな1日。
入学式のシーズンになると、必ず思い出す「気持ち」です。
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