紫
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よく電話がかかってくる家で育ちました。
そりゃ当然。
家が事務所代わりだったからです。
先代のあとをついで、父が工務店を開いてからは、私の家は四六時中といっていいほど、電話が鳴りました。
夜中の電話は、もちろん「やくざ」です。
そして、その電話に出るのは、私の役目。
「もしもし」
「おとうちゃん、おるか?」
「まだ帰っていません」
「なんや、まだかいな。おかあちゃんは?」
「もう寝ました」
「起こしてきてくれへんか」
「……………、いや!」
子どもだからこそ、こういう会話ができたのでしょう。
そして、子どもだからこそ、こういう会話が許されたのでしょう。
なぜ、こんな深夜にしかも「やくざ」から電話がかかってくるかは、当時はわかりませんでした。
でも、さすがに幼い私との会話に「やくざ」も「人の子」であり「人の親」なんだな、と子どもながらに思ったことを覚えています。
「おじょうちゃんも、たいへんやな。はよ、ねーや(寝なさい)」
「おじさんの電話が鳴ったから、起きたんです」
「…………、そ、そやな」
毎晩、限りない「付き合い」で午前様の父。
深夜の電話に、ノイローゼ気味だった母。
そんな家庭環境のなかでも、頭が良すぎた神経質な兄。
そして私は、深夜の電話に応対しながらも脳天気すぎるほど、世間知らずに育ちました。
最近よく、「やくざ」の乗っている車や、「親分」そのものをよく見ます。
不思議と怖くないのは、子どものころの経験と、やくざ上がりっぽいまじめな職人さんがたくさんいたおかげでしょうか。
それでも、私は商売を始めたばかりの父にいやがらせをし、母を苦しめたやくざの名前を忘れることはできません。
やくざがなんぼのもんやっちゅうねん!!
これはつっこみ?
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