紫
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小学校5年生のころ、市のマラソン大会に出場したことがあります。
陸上部だった私は、部活の先生のすすめで、いつもいっしょに走っていた友といっしょに申し込みました。
マラソンといっても、小学生の部はたったの2キロ。
それでもアップダウンの激しい道を往復します。
スポーツなら、何をさせても群を抜いていたその友に、私が対等に張り合えるのはマラソンくらいでした。
でも、彼女を抜いたことはありません。
いつもゴールギリギリで、彼女がすぅーっと当たり前のように前に出ます。
だからタイムの差はいつも1秒。
彼女が1番になるのは当たり前のことだったので、私もとくに「くやしい」とは思いませんでした。
市のマラソン大会の当日。
世間は広いもので、私たちよりも1分近く早い選手が1位を取りました。
だから、私たちは2位と3位を争います。
ゴール近くになって、ラストスパートに入りました。
ラスト50メートルくらいになると、最後の力を振り絞って短距離走のように思いっきり走ります。
「あれ?」
どうしたことか、いつものように彼女はすぅーっと前に出ません。
それどころか、ペースが落ちたように思いました。
「抜ける! ………でも…」
何を思ったのか、私もペースを落としてしまいました。
と同時に、すぅーっといつものように彼女は私の前に出て、いつものように1秒差のタイムで2位と3位。
ペースを落としたとはいえ、それでもタイムは私も友も自己ベストでした。
そして、そのあとしばらくしてから、私は陸上部を辞めました。
今も私の部屋には、そのときにもらった3位の賞状が飾ってあります。
あのとき、彼女を抜けなかったわけは、11歳の私しか知りません。
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