紫
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夕方になってから、空がゴロゴロといいだしました。
ゴロゴロと音は聞こえるけれど、雨はいっこうに降りません。
一雨、どさっと降ってくれれば、少しは涼しくなるだろうに。
といいつつ、雷は苦手です。
雷というよりも、雷が落ちて、停電するのが苦手です。
はっきりいえば、暗闇が大の苦手です。
子どものころ、兄と二人で留守番しているときに、落雷のため、停電になりました。
午後8時。家のなかはまっくらです。
泣き叫ぶ私をなだめようと、兄が懐中電灯をいっしょうけんめいに探してきて、こう言いました。
「ピカって光ってから、ゴロゴロなるまでの時間で、雷が遠くにいるか近くにいるかわかるんや」
それから二人で、ピカっと光ると大声で、「いーっち、にーーっ、さーーんっ…」と窓の外にむかって数え始めました。
でも、数える数がだんだんと減ってきて、雷がどんどん近くにやってきているのがわかり、ますます恐怖。
「だいじょうぶ。中学校に避雷針があるから、ここには落ちない」
「ヒライシン…?」
避雷針の意味はまったくわからなかったけれど、雷が落ちないとわかると、なんとなく怖さも半減。
このとき、兄は物知りだなあ、と思ったのを覚えています。
思えば、空が光るから真っ暗闇でもないし、外にむかって大声を出していることがなんとなく楽しく思えてきて、ますます大声で数を数え出したそのとき、ごく近所の空に大きな大きな稲妻が走りました。
「!!」
「!!!!!!!」
兄も私も、口をぽっかりと開けて、しばらく稲妻が走った空を見つめました。
あまりにも近すぎて、空が半分に割れたかのように見えたその稲妻は、私が想像していた以上に長くて白くて、空が落ちてきたかと思えるような大きな大きな音を出していました。
それが、兄と私が生まれて初めて見た稲妻です。
いまだに空がピカっと光ると、心のなかで数を数えだしている私。
雷は怖いし停電もいやだけど、数を数えることで気持ちがだんだんと落ち着いてきます。
これも、兄が教えてくれた「おまじない」なのでしょうか。
今日は結局、雨は降らずじまい。
この「おまじない」は使わずにすみました。
ほっ。
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