株式会社JOYWOW
椰子の実日記【JOYWOW】
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2007年10月21日(日)


写真はバリのお気に入りレストラン




今日も仕事。今日はスッキリセラピー。
日の傾き加減が秋だなあ、と思う。横浜オフィスは天窓が
あって、そこから太陽が差し込むのだが、夕方3時過ぎると
めっきり暗くなる。8月はそんなことはなかったのだが。

ところで、翻訳のための関連資料として
『How to change the world』(David Bornstein
Oxford)を読んでいる。勉強のために邦訳も合わせて参照
しているのだが、邦訳がかなり編集されていることに
気づいた。章は並べ替えられているし、本文もあちこち
バッサリ削除されている。翻訳そのものはきちんと
なされているが、編集はどんな感じかというと、
えーっと、漱石『坊つちゃん』を「坊つちゃんが松山に
行って、教頭と野だいことケンカして、ヤマアラシと
仲良くなって、結局最後は東京に戻って電車の運転手に
なった」とまとめてしまうようなものだ。味もそっけもない。

本書は社会企業家についての専門書としてはバイブルで、
スタンフォード、ハーバードなどの「社会企業家コース」
の教科書になっているほどの本である。原著者にpermission
はとってあるのだろうか。いずれにせよ、これでは味も
そっけもない。原著のもつ深みが損なわれている。
危惧するのは、英語でそのまま読む世界の人々と、
この翻訳でこの本を「読んだ」気になった日本人との
「情報落差」である。これでは翻訳ではなく、「訳編」とし、
どこをどういうふうに編集したのか、どこかに明記しておか
ないと、読者に不親切ではないかなあ。原著のもっている
ケースを、日本人があらためて本として書き直したような、
そんな出来になってしまっている。また、原著で重要な
役割を果たしている図版がすべてカットされている。
ナイチンゲールの開発したクリミア戦争におけるチャート(p.46)
など、とても貴重だと思うのだが。

はからずも著者は原著でこう述べている。

it was impossible to convey the essence of entrepreneurship
without going into considerable detail.(2007, Oxford ver.
Acknowledgments p.xx)


要するに、ディテールの積み重ねなしに、エッセンスだけで伝達
することは不可能、ということだ。

神は細部に宿る。これほど重要な作品だからこそ。

ページ数を多くできない、日本人読者に馴染みのある書き方
にしたほうが「売れる」、など、事情はわかる。

「売れる」かどうかだけが本の価値を決める昨今の出版界
の潮流にぼくは反対である。
いずれにしても、ぼくの翻訳仕事ではこういうことは
するまい、そうあらためて思った(これまでの仕事も一切
していない。一部日本人には馴染みがない、あるいは不要
と思われる部分を割愛したことはあるが、その場合でも、
その旨明記し、読者に伝えている)。

 

Kei Sakamoto |株式会社JOYWOW