| 2019年02月04日(月) |
(SS)意外とアキラも言う時は言う |
クリスマスや誕生日、すぐ先にあるバレンタインに比べて恋愛要素の低い節分は印象が薄く忘れやすい。
少なくともヒカルにとってはそうだった。
だからごく普通にアキラと買い物に行って、スーパーで山盛りに並べられている恵方巻を見て初めて思いだしたというわけだ。
「そういえばそうだったな」
アキラも意識に無かったらしく感心したように恵方巻とその隣に並べてある豆を見つめている。
「どうする? 男二人で豆まきもなんだし恵方巻でも買って行って食う?」
そうすれば夕食のメニューはそれで決まりだ。
けれどアキラは少し考えた後に首を横に振った。
「一食にしては高すぎる。それに恵方巻ならもう食べたし」
「え?食ってないだろ」
「食べたよ夕べ。間違いなく十二時は過ぎていたから節分に食べたことになるんじゃないのかな」
キミもぼくもと言われてヒカルははてと考えた。そしてやがてはっと気が付いて顔を手で覆う。
「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「それとも食べていなかったかな? あれはぼくの気のせいだったか」
「いや、食った! 確かに食った! 美味しく食べさせていただきましたっ!」
恥ずかしさのあまりアキラの顔を正視できず。それでもなんとか絞り出すように言う。
「あれでもう充分デスっ!」
「だったら豆だけ買って帰ろうか。「男二人の豆まき」になるけど」
ぶんぶんとヒカルが首を縦に勢いよく振る。
「豆撒きたい。おれ、今めっちゃ豆撒きたい気分」
「そうか、じゃあ豆を買って帰ろう」
そして夕食は無難にアジフライと野菜炒めとみそ汁になった。
デザート?は豆でお互い歳の分を食べ、それで完了したはずなのに、何故かその後やはり縁起物だからとアキラが言い出して、結局二人は『恵方巻』を再び食べることになったのだった。
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