クリスマスの朝目覚めた時、ヒカルは違和感を覚えた。
腕の中には安らかな寝息をたてるアキラ、微かに聞こえるのは加湿器の音、何も昨夜から変わっていないはずなのに、何か微妙に違うと思う。
少し考えた後、手足をもぞと動かして解った。
(なんでおれ、片方だけ靴下履いてるんだ?)
もちろん疲れていて脱ぎ忘れることは無いことでは無い。
けれど昨夜は下着に至るまですべて脱いで思う存分アキラと愛し合ったのだ。それなのに何故靴下を履いているのか、それも片方だけ。
(まあ、どうでもいいか)
こんなもの脱いでしまえばいいともう片方の足を使って脱ぎにかかった所、アキラの足が絡まるようにしてそれを止めた。
「なんだ、おまえ起きてたんだ」
「ダメだよ、脱いじゃ」
「だって片方だけとかむず痒いじゃん」
「それでもダメだ、キミはぼくのプレゼントなんだから」
「は?」
頓狂な声をあげるヒカルの胸に頬を摺り寄せアキラは言う。
「知らないのか? 『良い子』の家にはサンタクロースがプレゼントを届けてくれるんだぞ」
「って、おまえもう大人じゃん」
苦笑するヒカルの唇にそっと指が当てられる。
「あのね、知っていると思うけれどぼくの家は純日本風で、サンタクロースは来なかった。さすがにイブにケーキくらいは食べたけれど、どんなに良い子にしていても枕元にプレゼントが届くことは無かったんだよ」
何年も何年もずっと『良い子』にしてきたんだからそろそろ贈り物をもらっても良いとは思わないか? と尋ねられてやっとヒカルにも合点が言った。
「なーる…」
確かに塔矢家にクリスマスツリーもサンタクロースも似合わない。けれど似合わないからと言って憧れないとは限らない。
「で、じゃあおれがおまえのプレゼントなわけ?」
「靴下に入っていたのならね」
「そうか、おれがおまえのクリスマスプレゼントなのかぁ」
しみじみ感じ入ったように呟いた後、ヒカルは俯いて、アキラの髪に口づけながら聞いた。
「え? でも、じゃあおれのプレゼントは? おれもかなり『良い子』だったと思うんだけど、サンタクロースは来ないのかよ」
「本当に? キミはそんなに『良い子』だったかな」
「だったよ。少なくともおまえにとってはそうだったはず!」
憤慨したように言い切るヒカルにアキラがおかしそうに笑う。
「じゃあ確かめてみるといい、キミにもプレゼントが届いているのかどうか」
一瞬考えて、ヒカルは足でアキラの足先を触った。
先ほど絡められたのとは逆の足に、靴下の感触を覚えた時、その顔が満面の笑顔になった。
「届いてた! おれにも最高のプレゼント!」
そして幸せそうにぎゅっとアキラを抱きしめると、贈り物の中身をゆっくり確かめ始めたのだった。
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すみません、今頃ですがクリスマスSS第二弾です。 置き土産SSです〜。
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