SS‐DIARY

2007年03月15日(木) (SS)原因はめざま○テレビ


朝食の席、テレビの星占いを見ていた進藤がぽつりとつぶやいた。


「八方美人を責められそう、素直に自分の好き嫌いははっきり主張しましょうだって」
「へえ」

ぼくのはどうなのかなと自分の星座を見ようとした時だった、進藤はいきなり箸を置くと言ったのだった。


「おれ、本当はみそ汁は白みそよりも赤みその方が好きなんだ」
「え?」
「それでもって朝食には卵焼きじゃなくて目玉焼きが食べたい!」

卵焼きなんて男の食うもんじゃねーよと言われてカチンと来た。

「なんでいきなりそんなこと言うんだ」
「星占いが好き嫌いははっきり主張しろって言うから」

だから今日のおれは素直に生きるとわけのわからないことを言いながら更に進藤は続けた。

「それからずっと前から言いたかったんだけど、おれあんこは粒あんとこしあんじゃ絶対に粒あんの方が好き、こしあんなんて人間の食うもんじゃねーよ」
「ぼくはこしあんの方が好きだよ。粒あんなんてあんな下品なもの好きな人の気が知れないね」
「粒あんの何が下品なんだよ」
「漉して無い所、こしあんは邪魔な皮とか漉して取ってしまって上品な舌触りだ。それを粒あんは面倒がって取らないものだからぶつぶつと舌触りが悪くて…」
「こしあんなんてあんなぼやけた味のもんどこがいいんだよ。インパクトに欠けるって言うか、色もなんとなくちょっと白っぽいしさ」
「粒あんは逆に黒っぽいじゃないか、あんなもの美味しいだなんてキミの舌はどうかしているよ」
「粒のが絶対美味いんだよ!こしあんが美味いなんて、どうかしているのはおまえの舌の方なんじゃねえ?」


とにかく粒あん!とにかくこしあん!と大げんかをして家を出たぼくたちは、棋院についてもまだ言い争っていた。

「絶対に粒あんだって!」
「キミもしつこいな、あんこは絶対にこしあんだよ!」


そこへ通りがかった和谷くんが苦笑しつつ近づいて来た。

「なんだよ、朝から夫婦げんかかよ」
「聞いてくれよ和谷、こいつ信じられないこと言うんだよ」
「和谷くん、ちょうど良かった話を聞いてくれ。進藤は味のわからない味音痴なんだ!」

そして朝食の席から言い争っていたことを説明する。


「な、絶対にあんこは粒あんだよな?」
「キミもあんこはこしあんだと思うだろう?」


ぼくたちの話を全部最初から最後まで聞いた和谷くんは、聞き終わった後ぼくたちの顔を見てにやっと笑った。


「進藤も塔矢もあんこってもんがわかってないよな、あんて言ったらおれは絶対にうぐいすあんだね」

あの鮮やかな緑色がたまらないねと言われてぼくと進藤は顔を見合わせた。


「……………信じられねぇ」
「まったく、びっくりしたよ」


うぐいすあんが好きなんてそんな人間がこの世に居るなんて!


「あんなもん人間の食うもんじゃねーよな?」
「あんこはやっぱり小豆で無いとね」

ぼくと進藤は粒でもこしでもとにかくあんこの基本は小豆だということで意見が一致して、その後はずっと二人でうぐいすあんを好きだという、和谷くんのことを散々こき下ろしたのだった。


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こしあんを好きな人、粒あんを好きな人、うぐいすあんを好きな人ごめんなさい。私はどれも全部好きです。(土下座)


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